+主教イグナシオ
欅の坂みち2022年10月号
先週8月末にはまだ、ミンミンゼミの鳴き声が騒がしいくらいだったのですが、ここ2~3日はすっかりツクツクボウシに代わり、夕の礼拝が終わるころは、辺りはすっかり暮れるようになりました。残暑の中でも季節は確実に秋へと移りつつあるようです。
9月は1日が防災の日とされていて、1923年(大正12年)に起きた関東大震災から九九年を迎えました。たくさんの人が被災し、亡くなったのですが、それと併せて私たちが忘れてならないのは、その際に、多くの朝鮮人や中国人がデマにより虐殺されたということです。先の戦争もそうですが、こうしたいわば負の歴史こそ、しっかりと省みることが必要です。
そしてこれからのことに目を向ければ、気候変動がじわじわと進みつつあり、「今まで経験したことのない~」という警報が何度も繰り返されています。パキスタンでは洪水が起きているのに中国では旱魃になっていますし、雨が降ると豪雨になり、太陽が出れば猛暑です。日本に近づく台風の勢力もここ数年、次第に強まってきており、何がこの地球上で起きているのかをそこからしっかりと読み取っていかなければならないと思います。
ノアが箱舟をせっせと造っていた時、周りの人々は何も気づかずにめとったり嫁いだりしていて、そこに何も読み取りませんでした。
人間にとって便利で心地よいことが人間の自己満足に過ぎなかったり欲望の果てしなき肥大化であったりしないか、私たちは一度、立ち止まって、見詰めなおしてみる必要があると思います。
生活に不可欠な電気も、その内のある部分は原発によるものですから、原発に異を唱える際にも自らも身を切ることが求められていきます。イエスさまに倣うとは、自らもそこで痛みを負うことなのではないかと思います。