『ちいさな手』は社会委員会が定期発行するニュースレターです。
台田みんなの食堂「にじ」の誕生
子ども食堂をやってみたい。そんな思いは柏聖アンデレ教会の開所30周年記念をきっかけに生まれた。新型コロナが発生し、礼拝もままならなくなった2020年秋、私達は翌年に迫った30周年記念をどう過ごすかについて決断を迫られていた。何もせずに済ますことも考えられたがインターネットを使えば何とかなると考え、まずは過去にお世話になった方々にビデオメッセージの祝辞をいただくことにした。
その前に自分たちの足元を見直すため、恒例の意見交換会である「聴きましょう語りましょう」会(グループに分かれて教会の課題解決を自由に話し合う会)を開催することにした。管理牧師体制下で教会を如何に活性化するか、地域に開放された教会にする方策、若い人が集まらないこと、などが現状として認識され、いろいろなアイデアが出たが地道に歩んでいくしかないと結論を5つのビジョンにまとめて、一つ一つ実行することにした。
討議の過程で「子ども食堂」をやってみるのはどうだろう? との提案があった。だが、お金のかかる企画は無理だとの意見が多かった。それに新型コロナ感染が広がる中教会で食事を提供することは危険である。そもそも高齢化の進んだ教会の現状では食事を沢山の人に提供する人手もない。
開所30周年記念は記念誌や記念DVDを発行するなどで成功裏に終えたものの「子ども食堂」への思いだけは心に残っていた。そんなある日、街角で「子ども食堂キッチンカーでGo!」ののぼりが私の目に飛び込んできた。子どもは無料、大人は有料でお弁当を配布されているとのこと。「うちにも回ってくれませんか?」と聞くと、あっさり了解が得られた。代表者がクリスチャンだったこともあり、その後の打合せもトントン拍子で進んだ。「NPO法人ワーカーズコレクティブういず」と柏聖アンデレ教会との協力関係がスタートした。
教会の駐車場にお弁当配布のキッチンカーに来ていただき、私達は教会周辺にポスターを貼る。人を集める。役割分担は明確だった。子ども食堂は教会の活動ではなく地域の活動でなければならない。地域の活動であることを明確にするため、町内の方々数名と教会の信徒有志数名が話し合って独立の任意ボランティア団体「にじ」を組成することとなった。我孫子市子ども食堂ネットワークにも登録した。地元の皆さんとの協働関係も最初から順調だった。「にじ」の地元メンバーの一人で、現町会役員の方のご尽力で町内全戸に案内チラシを回覧していただけることになった。町内の掲示板にポスターを掲示してもらえることにもなった。約800世帯の目に触れることになる。
第一回は2021年10月5日だった。はたして目標の40食を超えるだろうか、喜んでもらえるだろうか。残念ながら第一回は目標を下回ったがその後徐々に口コミで広まり2回目以降は50食は確実に配布できるようになった。平日の昼開催であること、地域全体が高齢化していることから子ども達は少ないが、今や馴染みのご高齢の方々の憩いの場となっている。少しでも皆さんの交流の場になればと名称を「台田みんなの食堂にじ」とした。お弁当を渡すだけであれば15分ほどで終わってしまう。居場所作りを目的の一つとしているので食堂開催の週はミニ・バザーと持ち寄りギャラリー(ご近所の方々の趣味の芸術作品展示)を開催している。今までは素通りされていた皆さんが教会に立ち寄られることも増えてきた。
「にじ」の運営は寄付金や企業からの助成金、食材提供から成り立っている。活動の一つにフード・パントリーと呼ばれるものがある。企業から提供された食品等を無償で生活困窮家庭に提供するものだ。市のボランティアセンターや他の子ども食堂の指導を仰ぎながら今年の4月から試験的に始めた。助成金の申請、予約の受付、食材の購入、袋詰めなど一連の作業はあるが、みんなに喜んでもらえると思うとなぜかとてもワクワクする活動である。ある子ども食堂の先輩があまり肩に力を入れるとストレスが溜まって長続きしないよと忠告してくれた。確かに子ども食堂は子ども達の貧困・孤独、家庭内暴力、フードロス、孤独者の居場所作り等沢山の課題を解決すると社会の注目も浴びているが、無理せず気長にやっていきたい。地域のボランティア活動に教会という施設を使っていただくことから生まれる出会いと学びは計り知れないものがある。
開所30周年記念を機に生まれた地域に開放された教会になりたいという思いが今実現されている喜びに満たされる毎日である。
ミカエル 蘆田信裕(柏聖アンデレ教会信徒)
「コロナ禍での知的障がい者施設『野菊寮』について」
私は静岡県御殿場市にある知的障がい者支援施設「野菊寮」(御殿場コロニー)で施設長をさせて頂いている橋本誠と申します。
初めに「野菊寮」の紹介をさせて頂きます。社会福祉法人野菊寮の前身である「御殿場コロニー」は知的障がい者の入所施設として1961年に創設されました。
創設者牛島義友により、当時掲げられた理念は3つあります。①「キリスト教の精神に基づく」②「家庭寮で運営する」③「終生施設」。この3つは現在も受け継がれていますが、時代の変化によって変わってきていることもあります。①に関しては現在も毎週月曜日の午後に、施設内のチャペルに牧師先生に来ていただき、礼拝をささげております。毎年11月の第一月曜日に逝去者記念式礼拝として、野菊寮で生活をされこの世を去られた方々を覚えてお祈りをする日としています。ここ2年間はコロナにより保護者の方を呼ぶことができず、施設内の利用者の方と職員とで逝去者記念礼拝をささげました。
②に関しては、現在8つの小舎制(1棟10名前後)で家庭的な雰囲気を持ちながら一緒に生活をしています。開設当初は原則として施設内に職員が住み込みで働くことが原則でした。私も24年前に就職しましたが、10年以上施設内で利用者の方と一緒に生活をしていました。③に関しては、現在医療行為が必要になってしまった時には他施設への異動もありますが、利用者の方が野菊寮での生活を望む限りは実現できるようサポートしていきたいと思っています。現在は定員80名の入所者が野菊寮で生活をされています。
日本にコロナ感染者が出はじめたころは、正直「コロナウィルス」というものがどのようなものなのか分からず、様々な情報が飛び交い施設として利用者の方を守るにはどのようにすればよいのか日々考えていました。当然持ち込まないことが大前提ではあるものの、一度制限を設けたら戻すことがなかなかできない為、外出、外食、帰省などの制限をどうすればよいのかかなり悩みました。野菊寮は東京都の都外施設(現在は特例都外施設)であるので、保護者の方は東京都の方が多く帰省の禁止のタイミング等日々状況が変わる中判断をすることの難しさを現在も感じております。
利用者の方は、マスクの着用が難しい方が多く、今現在も外食など野菊寮以外の方との接触がある場所への外出は難しい方がほとんどです。私たちも同じ場所にずっといなければならないとストレスが溜まっていきます。利用者の方のストレスをどのように軽減するかを職員が一生懸命に考え、コロナ禍の中でも楽しみの機会を作って支援を行っていました。食べることは利用者の方も嬉しい時間です。しかし、今回のコロナウィルスはその事柄が一番感染リスクが高く、支援者はマスクを外して一緒に食事を楽しむことは難しかったです。インフルエンザと違い季節的なものではなく、一年中であったので、夏場のマスクを着用しての支援はとてもきついものです。支援員は冬場でも半そでになるぐらい動き回ります。夏場はそれに加えてマスク! かなりきつい状態で支援を行ってくれました。
野菊寮でもクラスターがあり終息するまでに約1ヶ月かかりました。驚くぐらい感染は早かったです。現在は全国的にコロナ感染者が減少しています。コロナウィルスの特性をしっかりと把握し、感染した時に早い対応が必要であることを強く感じております。
利用者の高齢化に伴い、老朽化している居住棟を高齢者向けに建てる予定で進んでいましたが、コロナや世界情勢による建築費の高騰により頭を悩ませています。
今後コロナがどのような形になっていくかわかりませんが、私たちはその時々の状況で、野菊寮で生活されている利用者の方々にとっていちばんよい生活の形を職員と考え支援していければと思います。
新棟建設に皆様のご支援ご協力をお願いいたします。
寄付金に関しての問い合わせは、野菊寮 0550-89-1421 橋本までお願いいたします。
ヨハネ橋本誠(沼津聖ヨハネ教会信徒、知的障がい者支援施設「野菊寮」施設長)
今、戦火にあるウクライナの人びとを覚えて
ウクライナのための祈り
正義と平和の神よ、わたしたちは今日、ウクライナの人々のために祈ります。またわたしたちは平和のために、そして武器が置かれますよう祈ります。明日を恐れるすべての人々に、あなたの慰めの霊が寄り添ってくださいますように。平和か戦争かを選ぶ力を持つ人々が、主から知恵と見識と苦しみを思いやる心を与えられて、み旨に適う決断へと導かれますように。そして何よりも、危険にさらされ、恐怖の中にいるあなたの大切な子どもたちを、あなたが抱き守ってくださいますように。平和の君、主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン
ジャスティン・ウェルビー カンタベリー大主教
スティーブン・コットレル ヨーク大主教
<ウクライナの人々をサポートするための募金先案内>
募金先の中には次のような機関があります(2022年10月現在。主に人道支援・医療支援を行っている機関です)。
- UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
紛争や迫害により故郷を追われた難民、避難民を国際的に保護・支援する国連機関の一つです。ウクライナ国内では、首都キーウなどを拠点に活動を継続しています。避難する人が一時的に滞在できるセンターを設置したり、現金支援を行ったりしています。周辺国では、国境を越えて避難してくる人たちを受け入れ、保護者のいない子どもへの支援やシェルターの設置を行い、心に傷を負った子どものための心のケアなどを実施しています。寄付の方法には、クレジットカード払い、コンビニ払い等の方法があります。
公式サイト:
https://www.japanforunhcr.org/campaign/ukraine/
- 日本ユニセフ協会
子どもとその家族が支援の対象です。現在もウクライナから撤退せず、西部リビウを拠点に活動を続けています。断水している地域に対して、給水車や飲料水で安全な水を届けているほか、移動式のチームを立ち上げ、子どものケアにあたっています。また医薬品不足が深刻なため、出産や新生児のための物資を送るなど保健医療面の支援も実施しています。周辺国では、保護者とはぐれたり、単独で国境を越えて逃げてきたりした子どもの保護に加え、赤ちゃんを連れている親に必要な物資の支援をしたり子どもが遊べる拠点づくりを行っています。寄付の方法には、クレジットカード払い、コンビニ払い等の方法があります。
公式サイト:
●国境なき医師団
ウクライナ各地の医療機関に、外科手術や救急医療で必要な医薬品や物資を届けています。また、ウクライナにいる医師などに対し、戦闘負傷者(爆弾や銃などによるけが人)の治療方法の技術的な指導を対面やオンラインで実施しています。ウクライナ国内外で避難している人を対象に、移動診療や心のケアも行っています。寄付の方法には、クレジットカード払い、コンビニ払い等の方法があります。
公式サイト:
社会委員ニュースレター「ちいさな手」第25号 2022年11月10日発行
編集責任者:宣教主事 司祭 サムエル 北澤 洋 編集・構成:司祭 テモテ 姜 暁俊
社会委員:司祭 ダニエル 竹内 一也、司祭 トマス 吉田仁志、エステル 近藤 順子(横浜聖アンデレ教会)、ペトロ 勝沼正和(横浜山手聖公会)