「実りの時を迎えて」

司祭バルナバ吉川智之
浜松聖アンデレ教会牧師

降臨節第3主日

浜松の教会には広い庭があり果樹が多く植わっています。春には梅と杏が実り、秋になりますと次郎柿が実ります。今年は昨年より多くの柿が色づいて信徒の皆さんに配ることができました。花壇に植えたサツマイモも夏の間にドンドンと繁っていき収穫が楽しみになって参りました。実りの秋を迎えております。

テレビのニュースでは二月からずっとウクライナでの戦争が報じられています。二月には多く情報が流されていましたが今は以前より大部減ってきました。しかし、SNSでは変わらず現地の状況を見ることができます。ロシアでは一般人の動員が始まり、普通の市民が戦場に向かうことになりました。動員兵がどうなっているのか現地の携帯電話やドローンから動画が挙がっています。多くの普通の若者が遠い戦場で命を落としている場面を日本からタイムラグなく見ることができる世界になりました。私はいくつか視聴してそれから見るのを辞めてしまいました。ロシア政府の指導者や正教会の大主教が戦争を肯定し、継続する発言を繰り返していることに人間の深い闇を感じています。


九月二三日に豪雨が静岡県を襲い浜松でも激しい雨が降りました。静岡市などで断水が起こりましたが、磐田市においても土砂災害の被害が起きました。磐田市にて災害ボランティアが始まったので十月の初めに行ってきました。旧豊岡村の一部で山が崩れ地域一帯が膝の高さまで土石流で埋まっていました。ボランティアの一団の一人として個人宅に厚く積もった岩石混じりの土砂を共同で取り除く作業に従事しました。ボランティアの中に遠くから来た男性が数人いました。話を立ち聞きすると定年退職後に各地で災害が起きると機材を持って駆けつけて働くことに生きがいを感じている男性たちでした。あそこはどうだった、ここはこうしたらいい、と話しながらテキパキと動いていました。七〇歳を超えてそのような生き方も悪くないと思いつつスコップで土砂を払い続けました。


降臨節第三主日の使徒書では聖ヤコブの言葉が選ばれています。「兄弟たち、主が来られるときまで忍耐しなさい。農夫は、秋の雨と春の雨が降るまで忍耐しながら、大地の尊い実りを待つのです。 あなたがたも忍耐しなさい。心を固く保ちなさい。」農夫は夏に渇水に遭いながらも秋に実りが来ることを信じています。忍耐とはいつ雨が来るか分からないが、しかし必ず雨が来ると信じて耐えて忍ぶことです。狭間に宙づりにありながら、主なる神は必ず来て上に引き上げて助けてくださることに確信を持ち続けることです。狭間には善いことも悪いこともあります、裁きがもたらされないことに辛さも苦しみもあります。主が来られる時まで忍耐し続ける心が与えられることを求めていきたいと願います。

(『横浜教区報』2022年12月号巻頭言より)

旧約聖書 イザヤ書 35:1-10
詩編 146:5-10
使徒書 ヤコブの手紙 5:7-10
福音書 マタイによる福音書 11:2-11
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