欅の坂みち 2023年2月

+主教イグナシオ

欅の坂みち 2023年2月号

クリスマスを迎える頃は一年で最も昼間の時間が短くなります。クリスマスがこの頃と定められたのも、昼の時間が最も短くなるというのが関係しています。


クリスマスから一月半ばにかけては、ちょうど朝の礼拝をささげている時に東寄りの窓(多くの教会では祭壇のやや右手の方向)から太陽の光が差し込んで来ます。かつての古今聖歌一七四番には「東の空は明け渡り…」とありましたが、まさにその瞬間です。


太陽が昇り、暗闇に光が照り渡っていくのです。それは、神さまの栄光が世界に照らし出されたという意味で「顕現」を思い起こさせるものでもあります。


三十年程前、私は山梨県清里の教会に派遣されました。春から秋にかけては多くの人が訪れる観光地でしたが、冬の寒さはとても厳しく、一月の朝六時の礼拝では零下十五度を下回る日が度々ありました。八ヶ岳から吹き降ろしてくる北風は冷たいというよりも“痛い”のです。目からはポロポロと涙が出る程でした。


しかし、そんな厳しい寒さの中で、まだ外は薄暗い中、一人で礼拝(当時はデイリーマスでした)をささげることが多かったのですが、一月から二月にかけては毎朝、礼拝中に夜が明けていくのです。そして差し込んで来る日脚ひあしは、毎日少しずつ伸びてきて、やがて畳の短辺分の長さにもなっていくのでした。それは、寒さの中にあって春の近づくのを感じられる大きな発見であり、また喜びでした。


寒さが厳しければ厳しいほど、また暗闇が深ければ深いほど、小さな温もりやほのかな明かりに希望と慰め、励ましを見出すことができ、それは大きな喜びなのです。


痛みや悲しみ、苦悩を知れば知るほど、そこで出会う慰めや励ましに対する感性は磨かれ、そこから生まれる喜びもまた大きく豊かなものとなっていきます。

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