欅の坂みち 2023年10月

+主教イグナシオ

欅の坂みち 2023年10月号

この教区報が届くころには、この暑さも収まっているでしょうか。九月に入っても関東では相変わらず、連日猛暑が続き、熱中症情報サイトからは、外出を控えて運動は中止するようにという呼びかけが届きます。

この夏、北海道地方では、熱中症になった人が多かったそうです。なぜなら、今まではエアコンなしで真夏を過ごせたため、エアコンの設備がなかったからです。

三〇年以上前、私が清里の教会に赴任した頃は、そこもまたエアコンなしで夏を過ごせるところでした。ところが、ある年の夏の猛暑によって、あちこちの宿泊施設でエアコンが設置されるようになりました。しかし、エアコンが涼しくしてくれるのは限られた空間だけで、その分ないしはそれ以上の熱が室外へと排出されます。それは冷蔵庫も同じ原理です。つまり、冷媒が圧縮されて高温の液体になり、その冷媒が気化する際に熱が奪われ、それによって空気を冷やしています。冷媒に圧力をかけて液体にする際の熱は、室外機から外へ放出されます。

試しに冷蔵庫の後ろ側に手を当ててみてください。正常に機能している冷蔵庫ならば、裏側が暖かくなっているはずです。そこでは冷やすために熱を作るという全く矛盾したことがなされており、そうなると、ますます外気温は上昇してしまいます。熱を作らずに冷やすことができれば、そのような矛盾は起こりませんが、残念ながら、そのような機関(装置)は存在しません。それでも今年の夏は、エアコンなしでは命に関わる毎日だったと言えますし、こうした状況は今後も続くことでしょう。

それは、神さまが造られた世界と次世代への負担となるものであり、快適さと同時にまた痛みとしても受け止めていかなくてはならないと思うのです。

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