「十人のおとめ」のたとえ

司祭パウロ真野玄範
立教英国学院

聖霊降臨後第24主日(特定27)

イエスは弟子たちから「あなたが来られて世の終わるときには、どんな徴があるのですか」と問われて、戦争、飢饉、地震など、人々が世の終わりの徴と見るようなことを列挙し、そうしたことは必ず起こるがそれはまだ世の終わりではない、そこで現れるのは偽メシアや偽預言者だ、屍のある所には禿鷲が集まるものだ、と言われました。あなたたちはその中で苦しみに遭う、しかし終わりまで耐え忍ぶ者は救われる、後にも先にもないような艱難に襲われても神がその時を縮めてくださる、人の子の徴は世にではなく天に現れる、その日、その時は誰も知らない、とお教えになりました。

そこで強調されたのが、いつその時が来てもいいように備えていなさい、ということでした。それがどういうことかを教えるために、イエスはたとえを話されました。

花婿が花嫁を迎えに行きました。その行列はいつ帰ってくるか分かりません。村のすみずみにまで喜びが知らされ、村人たちが行列を見て祝いの言葉をかけられるように、あちらこちらをまわっているからです。十人のおとめが、結婚を祝うために集まった人々と共に、婚宴の会場である花婿の家で待っていました。婚礼が行われるのは夏の夜です。中東では、女性は暗くなってから自分の家の外に行く時にはともしびを持ちます。

周りを照らすためではなく、自分の顔を照らして誰であるかを分かるようにするため、人に証言してもらえるようにするためです。それで十人のおとめはともしびを持っていました。花婿の行列はなかなか帰ってきませんでした。すでに真夜中になっていました。突然、「そら、花婿だ。迎えに出よ!」と叫ぶ声がしました。待っていた客人や家族が急いで通りに出て行きます。眠ってしまっていたおとめたちも目を覚まし、ともしびを整えました。ところが、愚かな五人のおとめは、そこで油が足りないことに気づきます。「分けてください」と賢いおとめたちに頼みました。しかし、それはできないことだと諭され、買いに行きました。夜中とはいえ、知り合いに頼めば無理なことではなかったからです。花婿と花嫁が到着しました。人々は屋敷の中に入り、戸が閉められました。愚かなむすめたちはようやく油を手に入れて戻ってきましたが、既に戸が閉められた後でした。「ご主人様、開けてください」と言いましたが、主人から「よく言っておく。私はお前たちを知らない」と言われてしましました。行列を出迎えなかったことは、ともしびを持っていないのと同じ位に失礼なことですから、そう言われてしまったのも当然なことでした。結婚を喜ぶ気持ちがあれば、祝いに連なる自分の顔が分かるようにともしびをしっかり準備していたでしょう。行列を出迎えていたでしょう。

婚宴は本当に喜んでくれている人たちに祝ってもらいたい、だからそうでない人は入っていただかなくて結構です、と言われたら、自分だったらそこで何を思うでしょうか。

「そら、花婿だ。迎えに出よ!」という叫びを聞くとき、どうかわたしたちが共に主を迎えることができますように。

(『横浜教区報』2023年11月号巻頭言より)

以下の旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988

旧約聖書 アモス書 5:18-24

18災いだ、主の日を待ち望む者は。
主の日はお前たちにとって何か。
それは闇であって、光ではない。
19人が獅子の前から逃れても熊に会い
家にたどりついても
壁に手で寄りかかると
その手を蛇にかまれるようなものだ。
20主の日は闇であって、光ではない。
暗闇であって、輝きではない。
祭りにまさる正義
21わたしはお前たちの祭りを憎み、退ける。
祭りの献げ物の香りも喜ばない。
22たとえ、焼き尽くす献げ物をわたしにささげても
穀物の献げ物をささげても
わたしは受け入れず
肥えた動物の献げ物も顧みない。
23お前たちの騒がしい歌をわたしから遠ざけよ。
竪琴の音もわたしは聞かない。
24正義を洪水のように
恵みの業を大河のように
尽きることなく流れさせよ。

詩編 70

1 神よ、救いに来てください‖ 主よ、急いでわたしを助けてください
2 わたしの命をねらう者は恥をさらし‖ 災いを喜ぶ者は見捨てられて恥を受ける
3 「それ見たことか」とあざける者は‖ 恥をさらして退く
4 あなたを求めるすべての人はあなたのうちにあって喜び楽しみ‖ 救いを尊ぶ人は「神は偉大な方」といつもたたえる
5 わたしは弱く貧しい者‖ 神よ、わたしのもとに急いでください
6 あなたはわたしの助け、また救い主‖ 主よ、ためらわないでください

使徒書 テサロニケの信徒への手紙 Ⅰ 4:13-18

13兄弟たち、既に眠りについた人たちについては、希望を持たないほかの人々のように嘆き悲しまないために、ぜひ次のことを知っておいてほしい。 14イエスが死んで復活されたと、わたしたちは信じています。神は同じように、イエスを信じて眠りについた人たちをも、イエスと一緒に導き出してくださいます。
15主の言葉に基づいて次のことを伝えます。主が来られる日まで生き残るわたしたちが、眠りについた人たちより先になることは、決してありません。 16すなわち、合図の号令がかかり、大天使の声が聞こえて、神のラッパが鳴り響くと、主御自身が天から降って来られます。すると、キリストに結ばれて死んだ人たちが、まず最初に復活し、 17それから、わたしたち生き残っている者が、空中で主と出会うために、彼らと一緒に雲に包まれて引き上げられます。このようにして、わたしたちはいつまでも主と共にいることになります。 18ですから、今述べた言葉によって励まし合いなさい。

福音書 マタイによる福音書 25:1-13

1「そこで、天の国は次のようにたとえられる。十人のおとめがそれぞれともし火を持って、花婿を迎えに出て行く。 2そのうちの五人は愚かで、五人は賢かった。 3愚かなおとめたちは、ともし火は持っていたが、油の用意をしていなかった。 4賢いおとめたちは、それぞれのともし火と一緒に、壺に油を入れて持っていた。 5ところが、花婿の来るのが遅れたので、皆眠気がさして眠り込んでしまった。 6真夜中に『花婿だ。迎えに出なさい』と叫ぶ声がした。 7そこで、おとめたちは皆起きて、それぞれのともし火を整えた。 8愚かなおとめたちは、賢いおとめたちに言った。『油を分けてください。わたしたちのともし火は消えそうです。』 9賢いおとめたちは答えた。『分けてあげるほどはありません。それより、店に行って、自分の分を買って来なさい。』 10愚かなおとめたちが買いに行っている間に、花婿が到着して、用意のできている五人は、花婿と一緒に婚宴の席に入り、戸が閉められた。 11その後で、ほかのおとめたちも来て、『御主人様、御主人様、開けてください』と言った。 12しかし主人は、『はっきり言っておく。わたしはお前たちを知らない』と答えた。 13だから、目を覚ましていなさい。あなたがたは、その日、その時を知らないのだから。」

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