+主教イグナシオ
欅の坂みち 2024年2月号
新たな年を迎えることができたことを、改めまして皆さまと共に主に感謝いたします。
しかし今年は、1月1日早々、能登半島を最大震度七という地震と津波が襲い、1月8日現在、150人以上の方が亡くなり、安否がわからない方は300人を超え、28000人の方が避難所に身を寄せているとのことです。
また、羽田空港ではその救援に向かおうとしていた海上保安庁の飛行機と日航機が滑走路で衝突して隊員五人が亡くなりました。
メメント・モリ(memento mori)という言葉があります。テレビCMに登場するオンライン・ゲームの名前にもあるのですが、ラテン語で「自分が死ぬことを忘れるな」といった意味です。
お正月の祝いの期節と突然の災害という両極端の状況が衝撃をより鮮明に際立たせています。私たちにとって嬉しいこと、喜ばしいことは少しずつ近付いて来るのですが、辛いこと、悲しいことは突然にやって来ることが多くあります。
その意味では、メメント・モリ、つまり「自分が死ぬことを忘れるな」というのは、限りある命を歩む者にとりましては、常に心しておくべき戒めと言えるでしょう。
「行ってきます」、「行ってらっしゃい」という言葉を交わしたどれほど多くの人が、それが最後の言葉掛けとなってしまったことでしょう。
このことは、私たちの想いを、命の危険に遭っているイスラエルのガザ地区やウクライナ、その他、紛争やさまざまな困難の中で喘いでいるたくさんの人たちの痛みに向けさせます。
私たちは時間の中に生かされているからこそ、今、ここで…という思いに突き動かされていくのです。
そして、終わりを意識することは、また、私たちが信仰の内に仰ぎ見ている、死を越えていく命を強く憶えることにもなるのだと思います。