+主教イグナシオ
欅の坂みち 2024年3月号
この原稿を書いている2月5日は関東地方で雪になり、横浜にも大雪警報が出され、夕方からは道路にも積もり始めました。
薬がなくなりかけていたので、歩いてもらいに行ってきましたが、国道は大渋滞でした。そんな雪の中も宅配の軽のワンボックスで荷物の集配をしている人を幾人も見かけました。このIT時代でも人の手によらなければ世の中動いていかないという実態、その脆弱さを垣間見たような気がしました。それにしても雪の中、ほんとうに大変な仕事です。
さて、今年の春は、教区内で6人の教役者が異動となりました。財政的にはできるだけ少なくしたいところですが、結果的に6人になってしまいました。その引越しの話を聞いていると、人手不足の中、繁忙期ということもあり、引越業者はなかなか強気のようで、ある教役者は6社に問い合わせたが、たった1社だけしか対応してくれなかったそうです。宅配もそうですが、引越も、現実はその仕事を引き受けてくれる人たちがいてこそできることなのです。それは、私たちが何かを購入する場合も同様で、その品物を仕入れてくれてこそ、私たちは購入できるのであって、そう考えますと、「お客様は神様」だなんてとんでもないことだと思うのです。お金を払う者が偉いなどというのは傲慢と言うほかありません。
「売ってくれてありがとう」、「届けてくれてありがとう」。この「ありがとう」の気持ちをお互いに持つことができたら、そこには小さいながらも平和が生まれるのではないでしょうか。「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キリスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。」(テサロニケⅠ5:16‐18)と聖パウロは記しています。