司祭 ルカ 片山 謙
教会の悩ましい現状
聖職・信徒の減少、財政逼迫が進む中、教会の発展的な展望を描くことが難しい状況の中に私たちはあります。少子高齢化、人口減少、政治経済の混迷、宗教団体への不信感や宗教離れ等々の社会全体の現状もその背景にあり、他の教派や他の伝統的宗教も似た状況を抱えているようです。組織として設立した教会であっても永続性が保証されているものではないので、今ある教会の存続が難しくなる場合もあります。数の減少への対策として信仰の継承の重要性が説かれますが教会の現状としてすでに信仰の継承が途絶えた家庭も少なくなく、継承しようと努めたもののそれができなかった場合、信仰継承の求めの正しさは認めつつも心の痛みを感じられることもあるのではないでしょうか。
どこに意識を向けるか
そのような中、各教会では知恵を出し合い、工夫を重ね種々の取り組みがなされていると思います。そこで大切にしたいことは組織維持に増して、種まき、福音の伝達、自分自身や周囲の人びとがみ心に適う状態になっていくこと、広く言えばこの世の福音化に意識と情熱を向けることです。組織維持の観点から現在の教会を見るならば、右肩下がりのグラフの一点と言わざるを得ません。ですが同時にこの一点は種まきに必要な種をいただく場所、自分自身や教会に集まる人びとに福音が伝えられ、この世の福音化に必要な拠点、神によってそのために与えられた私たちキリスト者にとってかけがえのない場所、それが教会です。「御言葉を宣べ伝えなさい。折が良くても悪くても励みなさい。」(Ⅱテモ4:2)と聖パウロが励ましているように、教会の悩ましい現状を私たちが抱えていても、御言葉を宣べ伝えることを神は私たちに求めておられます。
種の内に秘められた力
聖霊降臨後第4主日の福音書ではマルコによる福音書第4章の種についての2つのたとえが朗読されます。
1つ目は「成長する種」のたとえです。種は人の手によって蒔かれますが、種を実りへと成長させるのは人ではなく、自ら芽を出す種の力、それを促す土の働きで、実が熟して刈り入れるのは人です。神はみ言葉を人びとに伝えるという種まきと信じるようになった人々をみ前に伴うという刈入れとを私たちに託されています。蒔かれたみ言葉には芽を出す力があり、その芽を神は育まれます。
2つ目は「からし種」のたとえです。蒔かれた時にどんな種よりも小さな種が蒔かれて成長するとどんな野菜よりも大きく鳥が巣を作れるほどに成長します。このからし種のように人の心に与えられたみ言葉がさほど影響を与えていなくても時とともに大きな影響を与えることがあります。
この2つのたとえはどちらも神の国についてのたとえです。言い換えれば神のみ心の成就はどのようになされるかというたとえです。どちらのたとえも種を蒔くことが事の始まりです。種蒔きと刈入れは私たちに委ねられた働きです。私たちの心に折あるごとに蒔かれたみ言葉の種が神よって育まれています。信仰生活の中でそのみ恵みを味わいましょう。蒔かないところに芽は出ません。み言葉の種を蒔きましょう。
(林間聖バルナバ教会牧師)
(厚木聖ヨハネ教会管理牧師)
(『横浜教区報』2024年6月号巻頭言より)
特祷 特定6
あなたを愛する者のために、人の思いに過ぎたよい賜物を備えてくださる神よ、どうかわたしたちに何ものよりもあなたを愛する心を得させ、わたしたちの望みうるすべてにまさる約束のものを与えてください。主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン
日本聖公会祈祷書より
以下の旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
エゼキエル書 31:1-6,10-14
1第十一年の三月一日に、主の言葉がわたしに臨んだ。2「人の子よ、エジプトの王ファラオとその軍勢に向かって言いなさい。
お前の偉大さは誰と比べられよう。
3見よ、あなたは糸杉、レバノンの杉だ。
その枝は美しく、豊かな陰をつくり
丈は高く、梢は雲間にとどいた。
4水がそれを育て、淵がそれを大きくした。
淵から流れる川は杉の周りを潤し
水路は野のすべての木に水を送った。
5その丈は野のすべての木より高くなり
豊かに注ぐ水のゆえに
大枝は茂り、若枝は伸びた。
6大枝には空のすべての鳥が巣を作り
若枝の下では野のすべての獣が子を産み
多くの国民が皆、その木陰に住んだ。
10それゆえ、主なる神はこう言われる。彼の丈は高くされ、その梢を雲の間に伸ばしたので、心は驕り高ぶった。11わたしは彼を諸国の民の最も強い者の手に渡す。その者は彼を悪行に応じて扱う。わたしは彼を追放する。12諸国の最も凶暴な民である異国人が彼を切り倒し、山々の上に捨てる。その枝はすべての谷間に落ち、若枝は切られて地のすべての谷を埋める。地上のすべての民は、その木陰から逃げ去り、彼を捨てる。
13彼の倒された幹には、空のすべての鳥が住み
若枝のもとには、野のすべての獣がやどる。
14もはや、水のほとりの木もすべて丈を高くしえず、梢を雲の間に伸ばしえず、水に潤う木も、高ぶってそびえ立つことはできない。彼らはすべて死に渡され、穴に下る人の子らと共に地の深き所へ行く。
詩編 92:1-4,12-15 または 92
1 主をたたえることは良いこと∥ いと高き方のみ名をほめ歌うことはすばらしい
2 朝にあなたの慈しみを∥ 夕べにまことを宣べ伝え
3 竪琴を奏で、楽の音に合わせて∥ わたしはあなたをほめ歌う
4 主よ、あなたのみ業はわたしを喜ばせ∥ み手の業をわたしは喜び歌う
12 正しい人はなつめやしのように栄え∥ レバノンの杉のようにそびえる
13 主の家に植えられた人は∥ わたしたちの神の庭で栄える
14 年を経てもなお実を結び∥ いつも生き生きと生い茂る
15 こうして神の正しさが宣べ伝えられる∥ 神はわたしの岩。神には偽りがない
使徒書 コリントの信徒への手紙II 5:1-10
1わたしたちの地上の住みかである幕屋が滅びても、神によって建物が備えられていることを、わたしたちは知っています。人の手で造られたものではない天にある永遠の住みかです。2わたしたちは、天から与えられる住みかを上に着たいと切に願って、この地上の幕屋にあって苦しみもだえています。3それを脱いでも、わたしたちは裸のままではおりません。4この幕屋に住むわたしたちは重荷を負ってうめいておりますが、それは、地上の住みかを脱ぎ捨てたいからではありません。死ぬはずのものが命に飲み込まれてしまうために、天から与えられる住みかを上に着たいからです。5わたしたちを、このようになるのにふさわしい者としてくださったのは、神です。神は、その保証として“霊”を与えてくださったのです。
6それで、わたしたちはいつも心強いのですが、体を住みかとしているかぎり、主から離れていることも知っています。7目に見えるものによらず、信仰によって歩んでいるからです。8わたしたちは、心強い。そして、体を離れて、主のもとに住むことをむしろ望んでいます。9だから、体を住みかとしていても、体を離れているにしても、ひたすら主に喜ばれる者でありたい。10なぜなら、わたしたちは皆、キリストの裁きの座の前に立ち、善であれ悪であれ、めいめい体を住みかとしていたときに行ったことに応じて、報いを受けねばならないからです。
福音書 マルコによる福音書 4:26-34
26また、イエスは言われた。「神の国は次のようなものである。人が土に種を蒔いて、27夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出して成長するが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。28土はひとりでに実を結ばせるのであり、まず茎、次に穂、そしてその穂には豊かな実ができる。29実が熟すと、早速、鎌を入れる。収穫の時が来たからである 。」
30更に、イエスは言われた。「神の国を何にたとえようか。どのようなたとえで示そうか。31それは、からし種のようなものである。土に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、32蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」33イエスは、人々の聞く力に応じて、このように多くのたとえで御言葉を語られた。34たとえを用いずに語ることはなかったが、御自分の弟子たちにはひそかにすべてを説明された。