欅の坂みち 2024年7月

+主教イグナシオ

欅の坂みち 2024年7月号

 朝、ゴミ出しに行って通り掛かりの人に挨拶したところ、無視されてしまいました。よく見ると、その人はワイヤレスのイヤホンをしていて、こちらの声が聞こえていなかったのです。

 最近、目につくのは「セルフ~」ということです。古くはD.I.Y、その後、ガソリンスタンドでの給油、そして飛行場やホテルのチェック・インもセルフとなり、人手不足のためなのか今ではスーパーやホームセンターのレジもセルフがあちこちで増えています。

 何をするにも人を介して、物を買ったり売ったりしていたのは過去の出来事になりつつあり、今まで人と人とがやり取りしていたことを機械相手にセルフですることが増えました。

 人とのやり取りでは、そこでいっしょに言葉も交わされるのですが、機械が相手ではそれも不要ですし、スタッフがいるレジでのやり取りでもお客さんは無言のままといった場面を多く見掛けます。

 分からない時は人に聞けば済んだのですが、近ごろはその相手がいません。

 電話よりもネットによる問い合わせ窓口が増え、電話を掛けた場合でも直接、オペレーターと話ができるまで幾つものステップを踏まなければなりませんし、ネットでの対応は、その多くがまずはAIです。

 人との繋がりが希薄になり、人と関わることを面倒と感じる人が増えているのではないかと危惧します。人が人と出会えば、良くも悪くも互いに影響を与え合いますし、時に傷付いたり癒されたりすることもあります。そこに、お互いの気持ちが通じ合うということも起こります。自ら傷付くことで他人の痛みを痛みとして感じ、また、他人を思いやることも学びます。

 教会はキリストのからだです。キリストにおいて人と人とが互いに出会い、そして繋がり合う共同体であり続けたいものです。

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