「宣教の心がまえ」(聖霊降臨後第8主日・B年 特定10)

司祭 バルナバ 田澤 利之

 今日の福音書には、教会の福音宣教のあり様について記されています。宣教の中心課題は何でしょうか。それは、6章12節の言葉が重要になるのではないかと思います。「十二人は出かけて行って、悔改めさせるために宣教した。」つまり、宣教の目的は、人々を悔い改めさせることだということです。この言葉は、神の御心を知らなかった人が、その心を知るようになるということです。なぜなら “悔い改め”という言葉の原語はメタノイアといい、180度自分の考えを方向転換させることを意味しているからです。神の御言葉に触れて、神に向き直り、今の自分の思いを方向転換させるということです。ですから、教会の宣教は、人々に神の思いを伝え、人々はこれを聞いて自分の思いを180度変えることにあるということになります。これは何も個人的な事柄だけでなく、社会で起こることや、自然環境の問題についてもあてはまることだと思います。

 神は何とかして、この地上に神の御心を行おう、人間の罪によって傷ついたこの世に、創造本来の姿を回復させようとしておられるのであって、そのために、この地上にイエスを送ってくださったのです。ここに神の派遣という事実があり、弟子たちの派遣の原型があるのです。そして、派遣の源にあるのは、神の御心である神の愛を知ってもらうということです。イエスは、弟子たちを召し出し、訓練され、不完全ながらも送りだそうとされます。神の愛が、いたるところにまで広まることを望まれているのです。

 ところで、ドイツの聖書学者エレミアスは、『イエスの宣教』という著書の中で、弟子たちの派遣について、次のように語っています。「彼らの使命は救いの時の到来を告げること、そして悪魔追放を通じてサタンの支配圏に侵入することの2つである。」これを聞くと、弟子たちの派遣は誠に勇ましいもののように思われるかも知れません。しかし、私たちは、よく注意する必要があります。それは、今日の福音書の中で、宣教の大切な心構えとして、イエスは次のように言われているからです。

「杖一本のほか何も持たず、パンも、袋も、また帯の中に金も持たず、ただ履物は履くように、そして下着(Tunic)は二枚着てはならない。」(6:8-9)

 食料も荷物も金銭も持つ必要はない、ただ1本の杖だけを持ち、履物を履いて出かけて行きなさいと言われているのです。サタンと戦うには、杖1本だけで大丈夫だというのです。私たちは、これで本当にイエスからの大切なお役目を担うことができるのだろうかと不安に思います。

・・・大切なことがここに隠されています。それは、この貧しい姿の中にこそ、神の力が働くということです。自らを貧しくし簡素にすることは、ただ神にだけ寄り頼むということを意味しています。こうしたあり様で神中心の心構えを持つと、弱く小さな土の器である私たちの中に、神はその偉大な力をもたらしてくださるということです。こうした心構えの中に、汚れた霊に対する権能(Authority)をお授けになられるというのです。私たちの弱さ、貧しさの中にあって、神に頼る中で、神は働かれるのです。

(千葉復活教会牧師)
(福田聖公会管理牧師)

(『横浜教区報』2024年7月号巻頭言より)

特祷 特定10

主よ、憐れみの耳を傾けて、しもべらの祈りをお聞きください。どうかその願いがかなえられるために、主の喜ばれることを願い求めさせてください。主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン

日本聖公会祈祷書より

以下の旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988

旧約聖書 アモス書 7:7-15

7主はこのようにわたしに示された。見よ、主は手に下げ振りを持って、下げ振りで点検された城壁の上に立っておられる。 8主はわたしに言われた。「アモスよ、何が見えるか。」わたしは答えた。「下げ振りです。」主は言われた。「見よ、わたしは/わが民イスラエルの真ん中に下げ振りを下ろす。もはや、見過ごしにすることはできない。 9イサクの塚は荒らされ/イスラエルの聖なる高台は廃虚になる。わたしは剣をもって/ヤロブアムの家に立ち向かう。」10ベテルの祭司アマツヤは、イスラエルの王ヤロブアムに人を遣わして言った。「イスラエルの家の真ん中で、アモスがあなたに背きました。この国は彼のすべての言葉に耐えられません。11アモスはこう言っています。『ヤロブアムは剣で殺される。イスラエルは、必ず捕らえられて/その土地から連れ去られる。』」12アマツヤはアモスに言った。「先見者よ、行け。ユダの国へ逃れ、そこで糧を得よ。そこで預言するがよい。13だが、ベテルでは二度と預言するな。ここは王の聖所、王国の神殿だから。」14アモスは答えてアマツヤに言った。「わたしは預言者ではない。預言者の弟子でもない。わたしは家畜を飼い、いちじく桑を栽培する者だ。15主は家畜の群れを追っているところから、わたしを取り、『行って、わが民イスラエルに預言せよ』と言われた

詩編 85:7-13  または  85

1      主よ、あなたはみ国に恵みを注ぎ∥ ヤコブの栄えを新たにされた
2      あなたに民のとがを赦し∥ すべての罪を覆われた
3      激しい憤りをことごとく鎮め∥ み怒りを和らげられた
4      わたしの救いの神よ∥ 立ち返り、み怒りを鎮めてください
5      再びわたしたちを生かし∥ わたしたちに救いを与えてください
7      主よ、あなたの慈しみを示し∥ わたしたちに救いを与えてください
8     神の語られる言葉を聞こう∥ 主はその民、聖徒たち、神に信頼する人に平和を約束される
9      救いは神を畏れる人に近く∥ 栄光はわたしたちの地に住む
10     慈しみとまことはともに会い∥ 正義と平和は抱き合う
11     まことは地から芽生え∥ 正義は天から見守る
12     主はみ恵みを注ぎ∥ 地は豊かに実る
13     正義は神のみ前を進み∥ 神の歩む道を備える

使徒書 エフェソの信徒への手紙 1:1-14

 1神の御心によってキリスト・イエスの使徒とされたパウロから、エフェソにいる聖なる者たち、キリスト・イエスを信ずる人たちへ。 2わたしたちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにあるように。 3わたしたちの主イエス・キリストの父である神は、ほめたたえられますように。神は、わたしたちをキリストにおいて、天のあらゆる霊的な祝福で満たしてくださいました。 4天地創造の前に、神はわたしたちを愛して、御自分の前で聖なる者、汚れのない者にしようと、キリストにおいてお選びになりました。 5イエス・キリストによって神の子にしようと、御心のままに前もってお定めになったのです。 6神がその愛する御子によって与えてくださった輝かしい恵みを、わたしたちがたたえるためです。 7わたしたちはこの御子において、その血によって贖われ、罪を赦されました。これは、神の豊かな恵みによるものです。 8神はこの恵みをわたしたちの上にあふれさせ、すべての知恵と理解とを与えて、9秘められた計画をわたしたちに知らせてくださいました。これは、前もってキリストにおいてお決めになった神の御心によるものです。10こうして、時が満ちるに及んで、救いの業が完成され、あらゆるものが、頭であるキリストのもとに一つにまとめられます。天にあるものも地にあるものもキリストのもとに一つにまとめられるのです。11キリストにおいてわたしたちは、御心のままにすべてのことを行われる方の御計画によって前もって定められ、約束されたものの相続者とされました。12それは、以前からキリストに希望を置いていたわたしたちが、神の栄光をたたえるためです。13あなたがたもまた、キリストにおいて、真理の言葉、救いをもたらす福音を聞き、そして信じて、約束された聖霊で証印を押されたのです。14この聖霊は、わたしたちが御国を受け継ぐための保証であり、こうして、わたしたちは贖われて神のものとなり、神の栄光をたたえることになるのです。

福音書 マルコによる福音書 6:7-13

7そして、十二人を呼び寄せ、二人ずつ組にして遣わすことにされた。その際、汚れた霊に対する権能を授け、 8旅には杖一本のほか何も持たず、パンも、袋も、また帯の中に金も持たず、 9ただ履物は履くように、そして「下着は二枚着てはならない」と命じられた。 10また、こうも言われた。「どこでも、ある家に入ったら、その土地から旅立つときまで、その家にとどまりなさい。 11しかし、あなたがたを迎え入れず、あなたがたに耳を傾けようともしない所があったら、そこを出ていくとき、彼らへの証しとして足の裏の埃を払い落としなさい。」 12十二人は出かけて行って、悔い改めさせるために宣教した。 13そして、多くの悪霊を追い出し、油を塗って多くの病人をいやした。

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