「あなたがたも愛によって歩みなさい」(聖霊降臨後第12主日・B年 特定14)

司祭 ダビデ 渡部 明央
(エフェソの信徒への手紙 第4章30節-5章2節)

 朝の礼拝に収められている「導きのため」は、次のように祈ります。

 「永遠の父なる神よ、あなたはわたしたちをみ力によって造り、み恵みによって救ってくださいました。どうか聖霊によってわたしたちを強め、導いてください。わたしたちが自らを献げて主に仕え、ともに主の愛のうちにこの日を過ごすことができますように、み子イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン」(祈祷書34ページ)

 朝祈りますので、今日という一日を、自らを神様に献げ、主の愛のうちに過ごせますようにと祈るのです。

 特定14の使徒書、エフェソの信徒への手紙では、「あなたがたも愛によって歩みなさい」(エフェ5:2)と、わたしたちが愛のうちに生きるよう呼びかけられています。しかしその前に、「キリストがわたしたちを愛して、ご自分を香りのよい供え物、つまり、いけにえとしてわたしたちのために神に献げてくださったように」という言葉が付いています。わたしたちが愛のうちに生きるには、キリストがわたしたちを愛されたこと、そして神にご自分を献げられたことを憶えるよう示されているのです。

 わたしたち人間の愛は完全ではありません。完全でないどころか、簡単に自分本位に陥ってしまう甚だ不完全なものです。

 そのわたしたちに主イエスさまが示された愛は、自分の満足や自己中心のものではなく、献げる愛です。自分の思う通りに満たされることを求めるのではなく、自らを主に明け渡し、神さまの愛を基とした愛です。

朝の礼拝で「導きのため」の祈りを献げるとき、わたしたちは神さまの方へと立ち返り、神さまの愛を憶えて一日を始めることができます。

 横浜教区では、8月のひと月は平和宣教月間と定められており、各教会で平和を憶えて祈りが献げられることと思います。

 わたしたちが住むこの世界は、分裂、分断、痛みの只中にいます。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は続き、イスラエルとパレスチナガザのハマスとの戦争によって、毎日痛ましいニュースが報じられています。その他の国や地域でも紛争は起こり、多くの人が傷ついています。

 主イエスさまが示されたのは、分断・分裂ではなく、共生であり、互いに尊び合うことです。それは、「いのち」を尊ぶことなのです。誰もが祝福された存在であること。誰もが尊い存在であること。主イエスさまは、社会から排除された病人や罪人の所へ行き、彼らの尊いいのちを慈しまれました。

 平和を憶えて祈るこのとき、わたしたちは改めて主イエスさまの示された教え、そしてその生き方を憶えて、自らを主に献げて、神さまの愛のうちに一日々々を生きることができるよう祈りたいと思います。わたしたちが神さまの愛を憶えて生きるとき、わたしたちの生き方は神の愛に基づいた生き方へと変えられていきます。そして誰もが尊ばれる愛がこの世界に広まり、平和が訪れますよう祈り求めて参りたいと思います。

(横浜聖アンデレ教会牧師)

(『横浜教区報』2024年8月号巻頭言より)

特祷 特定14

永遠にいます全能の神よ、わたしたちに信仰と望みと愛とを増し加え、またあなたが約束してくださるものを得るためにあなたが命じられたことを愛させてください。主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン 

日本聖公会祈祷書より

以下の旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988

旧約聖書 申命記 8:1-10

 1今日、わたしが命じる戒めをすべて忠実に守りなさい。そうすれば、あなたたちは命を得、その数は増え、主が先祖に誓われた土地に入って、それを取ることができる。2あなたの神、主が導かれたこの四十年の荒れ野の旅を思い起こしなさい。こうして主はあなたを苦しめて試し、あなたの心にあること、すなわち御自分の戒めを守るかどうかを知ろうとされた。
 3主はあなたを苦しめ、飢えさせ、あなたも先祖も味わったことのないマナを食べさせられた。人はパンだけで生きるのではなく、人は主の口から出るすべての言葉によって生きることをあなたに知らせるためであった。4この四十年の間、あなたのまとう着物は古びず、足がはれることもなかった。5あなたは、人が自分の子を訓練するように、あなたの神、主があなたを訓練されることを心に留めなさい。6あなたの神、主の戒めを守り、主の道を歩み、彼を畏れなさい。7あなたの神、主はあなたを良い土地に導き入れようとしておられる。それは、平野にも山にも川が流れ、泉が湧き、地下水が溢れる土地、8小麦、大麦、ぶどう、いちじく、ざくろが実る土地、オリーブの木と蜜のある土地である。9不自由なくパンを食べることができ、何一つ欠けることのない土地であり、石は鉄を含み、山からは銅が採れる土地である。10あなたは食べて満足し、良い土地を与えてくださったことを思って、あなたの神、主をたたえなさい。

詩編 34:1-8 または 34

1       わたしは常に主をたたえ∥ 絶えず賛美を口にする
2       わたしの心は主をたたえ∥ 貧しい人もそれを聞いて喜ぶ
3       心を合わせて主をあがめ∥ ともにみ名をたたえよう
4       わたしが主を求めると、神はこたえられ∥ すべての恐れから助けてくださった
5       神を仰げば人の顔は輝き∥ 恥を受けることはない
6       苦しむ者が主に叫ぶと、神は聞き∥ 悩みの中から救い出してくださった
7       神を畏れる人の周りには、主のみ使いは陣を敷き∥ 彼らを助け出してくださる
8       主が恵みに満ちておられることを味わい知れ∥ 神に寄り頼む人は幸せ
9       主の聖徒たちよ、主を畏れよ∥ 神を畏れる人には乏しいことがない
10      おごり暮す者は乏しくなり∥ 主を求める人は良いもので満たされる
11      民よ、来てわたしに尋ねよ∥ 主を畏れることを教えよう
12      命を慕い求める者∥ 幸せな生涯を送ろうとする者はだれか
13      舌を制して悪を語らず∥ 偽るために口を開くな
14      悪を離れて良い業をなし∥ 心から平和を追い求めよ
15      主の注がれる目は正しい人の上に∥ 神は彼らの叫びを聞かれる
16      主のみ顔は悪を行う者に向けられ∥ 彼らの名は地から消される
17      主は正しい人の叫びを聞き∥ 悩みの中から救ってくださる
18      主は悲しみ嘆く者の近くにおられ∥ 失意の人を支えられる
19      正しい人は悩みが多い∥ しかし主はすべての悩みから助け出される
20      神は彼らの骨をことごとく守り∥ その一つさえ砕かれることはない
21      正しい人を憎む者は罪に定められ∥ 悪人は悪で身を滅ぼす
22      主は神に仕える人を贖い∥ 主に寄り頼む者を滅びから救われる

使徒書 エフェソの信徒への手紙 4:(25-29),30-5:2

 (25だから、偽りを捨て、それぞれ隣人に対して真実を語りなさい。わたしたちは、互いに体の一部なのです。26怒ることがあっても、罪を犯してはなりません。日が暮れるまで怒ったままでいてはいけません。27悪魔にすきを与えてはなりません。28盗みを働いていた者は、今からは盗んではいけません。むしろ、労苦して自分の手で正当な収入を得、困っている人々に分け与えるようにしなさい。29悪い言葉を一切口にしてはなりません。ただ、聞く人に恵みが与えられるように、その人を造り上げるのに役立つ言葉を、必要に応じて語りなさい。)30神の聖霊を悲しませてはいけません。あなたがたは、聖霊により、贖いの日に対して保証されているのです。31無慈悲、憤り、怒り、わめき、そしりなどすべてを、一切の悪意と一緒に捨てなさい。32互いに親切にし、憐れみの心で接し、神がキリストによってあなたがたを赦してくださったように、赦し合いなさい。5:1あなたがたは神に愛されている子供ですから、神に倣う者となりなさい。2キリストがわたしたちを愛して、御自分を香りのよい供え物、つまり、いけにえとしてわたしたちのために神に献げてくださったように、あなたがたも愛によって歩みなさい。

福音書 ヨハネによる福音書 6:37-51

37父がわたしにお与えになる人は皆、わたしのところに来る。わたしのもとに来る人を、わたしは決して追い出さない。38わたしが天から降って来たのは、自分の意志を行うためではなく、わたしをお遣わしになった方の御心を行うためである。39わたしをお遣わしになった方の御心とは、わたしに与えてくださった人を一人も失わないで、終わりの日に復活させることである。40わたしの父の御心は、子を見て信じる者が皆永遠の命を得ることであり、わたしがその人を終わりの日に復活させることだからである。」
 41ユダヤ人たちは、イエスが「わたしは天から降って来たパンである」と言われたので、イエスのことでつぶやき始め、42こう言った。「これはヨセフの息子のイエスではないか。我々はその父も母も知っている。どうして今、『わたしは天から降って来た』などと言うのか。」43イエスは答えて言われた。「つぶやき合うのはやめなさい。44わたしをお遣わしになった父が引き寄せてくださらなければ、だれもわたしのもとへ来ることはできない。わたしはその人を終わりの日に復活させる。45預言者の書に、『彼らは皆、神によって教えられる』と書いてある。父から聞いて学んだ者は皆、わたしのもとに来る。46父を見た者は一人もいない。神のもとから来た者だけが父を見たのである。47はっきり言っておく。信じる者は永遠の命を得ている。48わたしは命のパンである。49あなたたちの先祖は荒れ野でマンナを食べたが、死んでしまった。50しかし、これは、天から降って来たパンであり、これを食べる者は死なない。51わたしは、天から降って来た生きたパンである。このパンを食べるならば、その人は永遠に生きる。わたしが与えるパンとは、世を生かすためのわたしの肉のことである。」

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