欅の坂みち 2024年10月

欅の坂みち 2024年10月号

+主教イグナシオ

 台風10号は、かつて日本列島に接近あるいは上陸した台風では例を見ない動きと爪痕を残しました。
勢力もさることながら、辿った経路は日本列島の西半分をわざわざなぞるようにして迷走し、しかもその速度は自転車以下で、時には停滞して人の歩く速さ程でした。上陸した後、勢力は弱まりましたが、台風を取り巻く雨雲は長時間に亙って列島に掛かり続け、各地に大雨による被害をもたらしました。


 台風というとその被害は風や高潮を想像してしまうのですが、雨が長時間に亙って降るだけでも大きな被害をもたらすことが分かりました。


 ここ数年に比べても取り分け暑い夏がもたらした台風による大雨は、交通機関にも影響を及ぼし、新幹線をはじめ鉄道各線や高速道路、幹線道路が何日にも亙って不通となり、私も巡杖の予定を変更せざるを得ませんでした。


 それは、「地を治めよ」という造り主である神さまからのみ声に私たちが応えられていない現実を突きつけています。 み心に従い、正しく治めてこそ、その使命は果たされるのですが、一方では、もはや人の手には負えないくらいの不可逆的変化が起きてしまっているのではないでしょうか。


 そうはいっても21世紀の現代は、もはや電気のない生活は成り立たず、猛暑の中ではエアコンのスイッチを入れざるを得ないのが現実です。


 晴れれば猛暑となり、雨が降れば豪雨、そんな激しい気象変化の下、私たちは再生可能エネルギーへの転換による二酸化炭素削減、フードロスの解消、俯瞰的(ふかんてき)な視点からの環境保全への取り組みといったことに待ったなしで取り組んでいかなければならない時を迎えていることを、今更ながら改めて肝に銘じていく必要があると思うところです。

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