欅の坂みち 2024年12月

欅の坂みち 2024年12月号

+主教イグナシオ

 自転車のながら運転に対する罰則が、11月から強化されました。他方、歩行者のながらスマホは相変わらずよく見かけます。電車に乗ると、ほぼ7~8割の人がスマホを見ています。

 スマホとイヤホンは、いつどこでも好きな音楽が聴けますし、好きな動画が見られますので、利用者にとってはこの上なく便利なものですが、ながらスマホにはそれと引き換えにした危険性も併せ持っていることに注意すべきでしょう。

 私が気になるのは、そうしたスマホ利用の仕方が、常に周囲と隔絶された世界を作り出していることです。イヤホンをしていれば、外からの音や声も聞こえません。誰かに声を掛けられても、聞こえなければ結果的に無視することになりますし、対話は成り立ちません。

 コンビニのレジで、イヤホンをした人がスマホの画面を見詰めたまま店員とやり取りしているのをよく見かけます。そこに会話はほぼなく、せいぜい店員の声が行き所なく聞こえてくるだけです。

 人が人と出合っている場面なのですが、それが断絶されてしまっている光景です。断絶は分断を生み、分断は誤解を生じさせます。小さな誤解はやがて大きな争いの原因となることもあります。

 人間同士が出会っていないのではなく、出会っていながら人が敢えて隔絶を引き起こしているのです。

 スマホは一見、常に人と人とを繋げているツールのようにも見えますが、メールや電話は対面で会うことによる情報のほんの一部しか伝えくれていません。

 よいサマリヤ人の譬えでイエスさまは、「行って、あなたも同じようにしなさい」と言われます。「行く」とは他者と隔絶する自らの殻を破って外に出て行くことであり、人に出会って自分がその人の隣人になる、ということだと思うのです。

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