主教 イグナシオ 入江 修
(ヘブライ人への手紙1章3節)
1年で夜の訪れが最も早いのは、実は、冬至(12月21日頃)よりも少し早い11月の末から12月の初め頃の時期です。なぜかというと、それは、「地球が太陽のまわりを回る面(公転面)に対して自転の軸が傾いていることや、太陽のまわりを回る軌道(公転軌道)が真円形でないことなど」(ウェザーニュース)が理由なのだそうです。
しかし、師走といわれるこの時期、私たちの心はむしろ、ワクワクしているのではないでしょうか。それは、救い主が来られるのを待ち望んでいるからです。暗闇が増していく中、私たちの心は却って喜びに満たされています。
昼間、太陽の光が地上を覆っている間、太陽と同じ恒、つまり、自ら光を放っている数えきれないほどの星は、私たちの目には遮られて見えません。確かに星は輝いており、その光は私たちのところに届いているのですが、私たちには見えないのです。
でもそれは、星が存在していないのでも、また輝いていないのでもありません。私たちの目に見えていないだけのことなのです。
しかし、太陽が西の地平線に消えていくと、無数の星が空に煌きます。
降誕日に用意されている3つの聖書日課は、それぞれ深夜と早朝、そして降誕日の昼の主たる聖餐式のために拝読されますが、主たる聖餐式の福音書は聖ヨハネ福音書の第1章1節以下で、その4節以下には、「言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。光は暗闇の中で輝いている。暗闇は光を理解しなかった。」とあります。
光として来られた神の言であるみ子は命をお持ちで、その命は人間を照らす光だったのですが、その光は暗闇の中で輝いているのです。私たちの周りは、昼間、太陽が強く照り輝いており、星の光を見えなくしています。夜になっても、大都会では人工の光が一晩中煌いていて、夜空にはわずかの星しか見えません。
人が作り出した光によって、星の光が見えなくなっています。人が作り出している見せかけの光の中に留まり、その光を見つめている限り、私たちにはイエスさまという真の命の光は見えて来ないのです。なぜなら、「光は 暗闇の中で輝いている」からです。
私たちが目を向けて行かなければならないのは、人が作り出したこの世の過ぎ去り行く光ではなく、そのような光によって覆い隠されてしまっている闇です。なぜなら、光であるイエスさまは初めからそのようなところ、つまりベツレヘムの家畜小屋で世にお生まれになり、そして世の光に照らされることのないところに住む人びとの間を歩まれました。
冒頭の聖句は、降誕日の主たる聖餐式の聖書日課の使徒書であるヘブライ人への手紙の1章3節に記されているみ言葉で、私たちの父なる神は、ご自身の栄光の反映であり、ご自分の本質を完全に現されるみ子を、この世の闇にお遣わしになり、そこに、真の命の光として輝かされたのです。
救い主ご降誕の喜びに満たされた私たちは、過ぎ去り行く世の光によって生み出された闇に住む人びとを尋ね出すため、神の栄光を映し出す器とされて共にみ許から遣わされてゆくのです。
祝、ご降誕!
(横浜教区主教)
(『横浜教区報』2025年1月号巻頭言より)
特祷
全能の神よ、あなたは独りのみ子に人性を取らせ、この時、清いおとめから生まれさせてくださいました。どうかその恵みによって、再び生まれ、神の子とされたわたしたちを、常に聖霊によって新しくしてください。父と聖霊とともに一体であって世々に生き支配しておられる主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン
旧約聖書 イザヤ書 52:7-10
7いかに美しいことか/山々を行き巡り、良い知らせを伝える者の足は。彼は平和を告げ、恵みの良い知らせを伝え/救いを告げ/あなたの神は王となられた、と/シオンに向かって呼ばわる。 8その声に、あなたの見張りは声をあげ/皆共に、喜び歌う。彼らは目の当たりに見る/主がシオンに帰られるのを。 9歓声をあげ、共に喜び歌え、エルサレムの廃虚よ。主はその民を慰め、エルサレムを贖われた。10主は聖なる御腕の力を/国々の民の目にあらわにされた。地の果てまで、すべての人が/わたしたちの神の救いを仰ぐ。
詩編 98:1-5 または 98
1 新しい歌を主に歌え。神は不思議なみ業を行われた∥ その偉大な右手、尊いみ腕は救いの力
2 主は救いを示し∥ 諸国の民に正義を現された
3 慈しみとまことをもって、イスラエルの家に心を留められる∥ 遠く地の果てまで、すべての者が神の救いを見た
4 世界よ、主に向かって喜びの声を上げ∥ 声を放ち賛美の歌で神をほめよ
5 竪琴を奏でて主をたたえ∥ その調べに合わせてほめ歌え
6 ラッパと角笛を吹き鳴らし∥ 王である主のみ前で喜びの声を上げよ
7 海とそこに満ちるものはどよめき∥ 世界とそこに住む者は歌え
8 川の流れは手を打ち鳴らし∥ 山々はともに主のみ前に喜び歌え
9 神は世界を審きに来られる∥ 正義で世界を、公正ですべての民を審かれる
使徒書 ヘブライ人への手紙 1:1-12
1神は、かつて預言者たちによって、多くのかたちで、また多くのしかたで先祖に語られたが、 2この終わりの時代には、御子によってわたしたちに語られました。神は、この御子を万物の相続者と定め、また、御子によって世界を創造されました。 3御子は、神の栄光の反映であり、神の本質の完全な現れであって、万物を御自分の力ある言葉によって支えておられますが、人々の罪を清められた後、天の高い所におられる大いなる方の右の座にお着きになりました。 4御子は、天使たちより優れた者となられました。天使たちの名より優れた名を受け継がれたからです。 5いったい神は、かつて天使のだれに、/「あなたはわたしの子、/わたしは今日、あなたを産んだ」と言われ、更にまた、/「わたしは彼の父となり、/彼はわたしの子となる」と言われたでしょうか。 6更にまた、神はその長子をこの世界に送るとき、/「神の天使たちは皆、彼を礼拝せよ」と言われました。 7また、天使たちに関しては、/「神は、その天使たちを風とし、/御自分に仕える者たちを燃える炎とする」と言われ、 8一方、御子に向かっては、こう言われました。「神よ、あなたの玉座は永遠に続き、/また、公正の笏が御国の笏である。 9あなたは義を愛し、不法を憎んだ。それゆえ、神よ、あなたの神は、喜びの油を、/あなたの仲間に注ぐよりも多く、あなたに注いだ。」10また、こうも言われています。「主よ、あなたは初めに大地の基を据えた。もろもろの天は、あなたの手の業である。11これらのものは、やがて滅びる。だが、あなたはいつまでも生きている。すべてのものは、衣のように古び廃れる。12あなたが外套のように巻くと、/これらのものは、衣のように変わってしまう。しかし、あなたは変わることなく、/あなたの年は尽きることがない。」
福音書 ヨハネによる福音書 1:1-14 または、ルカによる福音書 2:1-20
【ヨハネによる福音書 1:1-14】
1初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。 2この言は、初めに神と共にあった。 3万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった。 4言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。 5光は暗闇の中で輝いている。暗闇は光を理解しなかった。 6神から遣わされた一人の人がいた。その名はヨハネである。 7彼は証しをするために来た。光について証しをするため、また、すべての人が彼によって信じるようになるためである。 8彼は光ではなく、光について証しをするために来た。 9その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。10言は世にあった。世は言によって成ったが、世は言を認めなかった。11言は、自分の民のところへ来たが、民は受け入れなかった。12しかし、言は、自分を受け入れた人、その名を信じる人々には神の子となる資格を与えた。13この人々は、血によってではなく、肉の欲によってではなく、人の欲によってでもなく、神によって生まれたのである。14言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた。
【ルカによる福音書 2:1-20】
1そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。 2これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。 3人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。 4ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。 5身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。 6ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、 7初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。 8その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。 9すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。10天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。11今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。12あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」13すると、突然、この天使に天の大軍が加わり、神を賛美して言った。14「いと高きところには栄光、神にあれ、/地には平和、御心に適う人にあれ。」15天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。16そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。17その光景を見て、羊飼いたちは、この幼子について天使が話してくれたことを人々に知らせた。18聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。19しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。20羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて天使の話したとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。
旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
特祷、詩編は『日本聖公会祈祷書』より引用しました。
©︎日本聖公会 1990