欅の坂みち 2025年5月
+主教イグナシオ
東京でソメイヨシノが満開になったのですが、4月を目前にした今日は真冬並みの寒さで、冷たい雨もパラパラと降って来ました。
明日からは4月、希望に胸を膨らませている子どもたちや青年も大勢いることでしょう。
中学の頃、体育祭のマスゲームの練習で365歩のマーチという曲に合わせて繰り返し行進の練習をさせられたことがあります。
その歌の中に、「1日1歩、3日で3歩、3歩進んで2歩下がる」という歌詞があったのですが、それは結局1歩しか進んでいないのではないかと思ったものです。
昨今、タイパということが注目されています。そのせいか、皆、せわしくしているようにも見えることがあります。タイパはタイム・パフォーマンス「時間対効果」の意味で、コスト・パフォーマンス「対費用効果」に代わってよく聞かれるようになった言葉ではないでしょうか。
そのタイパからすると、「3歩進んで2歩下がる」のは、タイパがよいとは決して言えません。3日で3歩進み、その後2日で2歩下がると、結局、5日で1歩、1日分しか進んでいないことになるからです。
しかし、日常では、それに似たことがしばしば起こります。タイパを求めて課題そのものを素早く終わらせたにも拘らず、後からそこに間違いが見つかって、その修正のために時間を費やしてしまうのです。それならば、1つひとつを着実に進めた方が結果的に早く完了することになります。タイパを求め過ぎて急ぐことで間違いが生じるよりは、多少時間を掛けてでも着実・丁寧に事を進める方が、結果としてタイパもよくなるのです。
その意味で、タイパが求められる中、私たちの信仰生活もまた、速さ一辺倒にならず、着実・丁寧に歩むことに心を向けていきたいと思うのです。