主教 イグナシオ 入江 修
(ローマの信徒への手紙 第6章11節)
復活前夕にささげられる礼拝(イースター・ヴィジル)の中にある黙想のための聖書は、天地が神のみ心に適うものとして造られ完成されたにも拘らず、造り主である神のみ心に背き、食べてはならない木の実を取って食べてしまう人間の罪に陥る姿が記され、そこから神がいかにして人類を救いに招き入れようとされているかがイスラエルとの関係を通して辿られています。
聖書が私たちに突き付けている罪は、そのみ心に背くことです。み心に背くとは、人が造り主である神から離れて自らを寄りどころとしていくことといえるでしょう。
造り主である方にではなく自らに寄って立とうとすること、それがすなわち神から離れることであり、自らの思うままに歩もうとすることによって罪に陥っていくのです。
主イエスさまが荒れ野へと導かれ、そこで受けられた悪魔の誘惑も、その根底にあるのは、神から離れて神に寄り頼むことを捨て、自らに寄って立つことへの巧妙な誘いといえます。
そして、そのような罪の結果、人はみな誰一人例外なく死ぬべきものとなりました。それは命の終焉を迎えねばならないということであり、この世の時間の中に閉ざされるということを意味しています。
しかし神は、そのような私たち人間がそのまま死に至ることをよしとはされず、み心に背いた者をその報いとして与えられる死から命に導き入れるために救いのみ手を伸ばされました。それは、愛する独り子を世に遣わされて、その尊い苦しみと死をもって、悔い改めてみ許に立ち帰る者を死という時間の束縛から永遠の命へと解放されるためでした。
それが、主イエス・キリストの十字架の死と復活でした。キリストは、その十字架の苦しみと死をもって私たちの罪を私たちに代わって負われ、そして、死んで復活されたことによって、罪の報いである死をご自身の死をもって滅ぼし打ち破られたのです。
罪による死に支配され、時間の中に閉ざされてしまっていた私たちは、キリストが死んで復活されたことによって、死の支配、つまり時間の閉塞から解放されたのです。それが、キリストのご復活によって示され、またその保証とされている永遠の命です。
罪に陥り、死に支配されて時間の中に閉ざされた私たちは、キリストの十字架の犠牲によってその罪がことごとく贖われ、もはや死に支配されることのない命に生かされているのです。それは、言い換えれば、時間によって閉ざされていた命が永遠へと解き放されたということです。
まさにそれは、エジプトで奴隷となっていたイスラエルがモーセによって導かれ、神が約束された乳と密の流れる地を目指して歩んでいくことに重ねられます。
そのように歩み続けていくために私たちを養ってくださるのが、キリストの御体と御血です。キリストの命に満たされたこの計り知れない大きな幸いに私たちは常に感謝と賛美をもって応え、すべての人と共に喜び祝うため、キリストご復活の喜びを世界に証しする者とされてみ許から遣わされて参りましょう。
「ハレル・ヤ、ほんとうに主は甦られた!」
(『横浜教区報』2025年5月号巻頭言より)
特祷
すべての命と力の源である神よ、あなたはみ子の力ある復活により、罪と死の古い支配の力に打ち勝ち、み子にあって万物を新しくしてくださいました。どうかわたしたちが罪に死に、イエス・キリストにあってあなたに生き、栄光のうちにみ子とともに支配することができるようにしてください。父と聖霊とともに、讃美と誉れ、栄光と力が、いまもまた永遠にみ子にありますように。アーメン
全能の神よ、あなたは独りのみ子を死からよみがえらせ、永遠の命の門を開いてくださいました。どうか、み子の復活を祝うわたしたちを、聖霊によって罪の死から命によみがえらせてください。父と聖霊とともに一体であって世々に生き支配しておられる主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン
旧約聖書 使徒言行録 10:34-43 または イザヤ書 51:9-11
【使徒言行録 10:34-43】
34そこで、ペトロは口を開きこう言った。「神は人を分け隔てなさらないことが、よく分かりました。35どんな国の人でも、神を畏れて正しいことを行う人は、神に受け入れられるのです。36神がイエス・キリストによって――この方こそ、すべての人の主です――平和を告げ知らせて、イスラエルの子らに送ってくださった御言葉を、37あなたがたはご存じでしょう。ヨハネが洗礼を宣べ伝えた後に、ガリラヤから始まってユダヤ全土に起きた出来事です。38つまり、ナザレのイエスのことです。神は、聖霊と力によってこの方を油注がれた者となさいました。イエスは、方々を巡り歩いて人々を助け、悪魔に苦しめられている人たちをすべていやされたのですが、それは、神が御一緒だったからです。39わたしたちは、イエスがユダヤ人の住む地方、特にエルサレムでなさったことすべての証人です。人々はイエスを木にかけて殺してしまいましたが、40神はこのイエスを三日目に復活させ、人々の前に現してくださいました。41しかし、それは民全体に対してではなく、前もって神に選ばれた証人、つまり、イエスが死者の中から復活した後、御一緒に食事をしたわたしたちに対してです。42そしてイエスは、御自分が生きている者と死んだ者との審判者として神から定められた者であることを、民に宣べ伝え、力強く証しするようにと、わたしたちにお命じになりました。43また預言者も皆、イエスについて、この方を信じる者はだれでもその名によって罪の赦しが受けられる、と証ししています。」
【イザヤ書 51:9-11】
9奮い立て、奮い立て/力をまとえ、主の御腕よ。奮い立て、代々とこしえに/遠い昔の日々のように。ラハブを切り裂き、竜を貫いたのは/あなたではなかったか。10海を、大いなる淵の水を、干上がらせ/深い海の底に道を開いて/贖われた人々を通らせたのは/あなたではなかったか。11主に贖われた人々は帰って来て/喜びの歌をうたいながらシオンに入る。頭にとこしえの喜びをいただき/喜びと楽しみを得/嘆きと悲しみは消え去る。
詩編 118:14-17,22-24 または 118:14-29
118
1 主に感謝しなさい∥ 神は慈しみ深く、その憐れみは永遠
2 イスラエルよ、言え∥ 神の慈しみは永遠
3 アロンの家よ、言え∥ 神の慈しみは永遠
4 主を恐れる者よ、言え∥ 神の慈しみは永遠
5 悩みの中から主を呼び求めると∥ 主はこたえ、わたしを自由にされた
6 主はわたしとともにおられる。わたしは恐れることはない∥ 人がわたしに何をなしえよう
7 わたしの助けである主はわたしとともにおられる∥ わたしは敵をものともしない
8 主のみもとに身を避けるのは∥ 人に頼るよりもよい
9 主のみもとに身を避けるのは∥ 支配する者に頼るよりもよい
10 すべての国に囲まれたのに∥ わたしは主のみ名によって彼らを打ち砕いた
11 四方から取り囲まれていたのに∥ わたしは主のみ名によって彼らを打ち砕いた
12 彼らは蜂のようにわたしを囲み、いばらの火のように燃え上がったのに∥ わたしは主のみ名によって彼らを打ち砕いた
13 わたしが押され、突かれて倒れそうになったとき∥ 主はわたしを助けられた
14 主はわたしの力、わたしの歌∥ 神こそわたしの救い
15 喜びと勝利の叫びが正しい人の天幕にある∥ 「主の右の手は力を示す
16 神の右の手は高く上がり∥ その右の手は力を示す」
17 わたしは生き長らえて死ぬことなく∥ 主のみ業を告げ知らせよう
18 主はわたしを責められたのに∥ 死に渡そうとはされなかった
19 正義の門よ、扉を開け∥ わたしは中に入って主に感謝を献げよう
20 これは主の門∥ 正しい人はここから入る
21 わたしはあなたに感謝する∥ あなたはこたえてわたしを救われた
22 家造りの捨てた石が∥ 隅のかしら石となった
23 これは主のみ業∥ 人の目には不思議なこと
24 今日こそ主が造られた日∥ この日をともに喜び祝おう
25 ああ、主よ、お救いください∥ ああ、主よ、栄えをお与えください
26 主のみ名によって来る人に、祝福があるように∥ わたしたちは主の家からあなたがたを祝福する
27 神、主はわたしたちを照らしてくださる∥ 枝を携えて行列に加わり、祭壇の角まで進もう
28 あなたはわたしの神∥ あなたに感謝し、あなたをたたえる
29 主に感謝しなさい∥ 神は慈しみ深く、その憐れみは永遠
使徒書 コロサイの信徒への手紙 3:1-4 または 使徒言行録 10:34-43
【コロサイの信徒への手紙 3:1-4】
1さて、あなたがたは、キリストと共に復活させられたのですから、上にあるものを求めなさい。そこでは、キリストが神の右の座に着いておられます。 2上にあるものに心を留め、地上のものに心を引かれないようにしなさい。 3あなたがたは死んだのであって、あなたがたの命は、キリストと共に神の内に隠されているのです。 4あなたがたの命であるキリストが現れるとき、あなたがたも、キリストと共に栄光に包まれて現れるでしょう。
【使徒言行録 10:34-43】
34そこで、ペトロは口を開きこう言った。「神は人を分け隔てなさらないことが、よく分かりました。35どんな国の人でも、神を畏れて正しいことを行う人は、神に受け入れられるのです。36神がイエス・キリストによって――この方こそ、すべての人の主です――平和を告げ知らせて、イスラエルの子らに送ってくださった御言葉を、37あなたがたはご存じでしょう。ヨハネが洗礼を宣べ伝えた後に、ガリラヤから始まってユダヤ全土に起きた出来事です。38つまり、ナザレのイエスのことです。神は、聖霊と力によってこの方を油注がれた者となさいました。イエスは、方々を巡り歩いて人々を助け、悪魔に苦しめられている人たちをすべていやされたのですが、それは、神が御一緒だったからです。39わたしたちは、イエスがユダヤ人の住む地方、特にエルサレムでなさったことすべての証人です。人々はイエスを木にかけて殺してしまいましたが、40神はこのイエスを三日目に復活させ、人々の前に現してくださいました。41しかし、それは民全体に対してではなく、前もって神に選ばれた証人、つまり、イエスが死者の中から復活した後、御一緒に食事をしたわたしたちに対してです。42そしてイエスは、御自分が生きている者と死んだ者との審判者として神から定められた者であることを、民に宣べ伝え、力強く証しするようにと、わたしたちにお命じになりました。43また預言者も皆、イエスについて、この方を信じる者はだれでもその名によって罪の赦しが受けられる、と証ししています。」
福音書 ルカによる福音書 24:1-10
1そして、週の初めの日の明け方早く、準備しておいた香料を持って墓に行った。 2見ると、石が墓のわきに転がしてあり、 3中に入っても、主イエスの遺体が見当たらなかった。 4そのため途方に暮れていると、輝く衣を着た二人の人がそばに現れた。 5婦人たちが恐れて地に顔を伏せると、二人は言った。「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか。 6あの方は、ここにはおられない。復活なさったのだ。まだガリラヤにおられたころ、お話しになったことを思い出しなさい。 7人の子は必ず、罪人の手に渡され、十字架につけられ、三日目に復活することになっている、と言われたではないか。」 8そこで、婦人たちはイエスの言葉を思い出した。 9そして、墓から帰って、十一人とほかの人皆に一部始終を知らせた。10それは、マグダラのマリア、ヨハナ、ヤコブの母マリア、そして一緒にいた他の婦人たちであった。婦人たちはこれらのことを使徒たちに話したが、
旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
特祷、詩編は『日本聖公会祈祷書』より引用しました。
©︎日本聖公会 1990