欅の坂みち 2025年7月

欅の坂みち 2025年7月

+主教イグナシオ

 6月に入り、主のご復活から50日目の聖霊降臨日を迎えようとしています。

この頃になると一雨ごとに雑草がたくましく生えて来てあっという間に草ぼうぼうになってしまいます。

草取り作業は地面に這いつくばらないとできません。素直に抜けてくれる草ばかりでなく、なかなかしぶとい草もあって、中途半端な姿勢では抜けない草も少なくありません。

そして、こうして地面に這いつくばってみると、いつもと違った景色が目の前に広がります。普段は地面から1.5mくらいの高さから地面を見下ろしているのですが、逆に地面から周りの景色を見上げてみると、それは目に新鮮に映ります。

私たちの足元を歩いている虫たちはこんな風に世界を見ているのかと思ったり、また、毎日、隣の公園に散歩にやって来る保育園の幼子たち、殊にまだよちよち歩きの1才や2才の子どもたちの目線から見た世界に、嘗て自分が眺めていたであろう景色が重ね合わせられていきます。

創世記にあるバベルの塔は上へ上へと向かおうとする人間の飽くなき欲望と驕り高ぶりを示している一方、イエスさまは弱く貧しい幼子となられて御父の御許から私たちの世においでになりました。

そして、海面下400mを越すこの地上で最も低い死海に流れ込むヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられ、神の独り子は罪人と同じようになられて十字架に架かられました。それは、謙遜の極みです。

人間の歴史は、人が自らを他人よりも高いところに立とうとして争いを繰り返してきたといえます。私たちにもその思いがしばしば湧き起こります。

時には腰を下ろして幼子の目線から、あるいは更に低く、地面に這いつくばってみて、地球の縁(ヘリ)にいる我が身を思い起こしてみたいものです。

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