「み言葉に親しみ、み言葉により生かされる。」聖霊降臨後第19主日(特定24)

司祭 ルカ 片山 謙
(テモテの手紙 2 第3章14節―第4章5節)

私たちと聖書のみ言葉

 皆さんが大切にされている聖書の箇所はどの箇所でしょうか。私の場合、10代の終わりの頃、手あたり次第聖書を通読したとき、心に残った箇所になります。通読してもほとんど意味が分からない中、心とらえられ何度も読み返した箇所です。その後の信仰生活の中で加えて多くの箇所が与えられてきましたが、振り返ってみると最初に心に残った聖書のみ言葉によって信仰生活の目標が与えられ、信仰生活が徐々に整えられてきたように思います。その箇所はローマの信徒への手紙の第12章ですが、初めてこの箇所を読んで以来、自分の信仰生活の指針となり、そこに近づきたいと願い続け、その道のりは今も続いており、この箇所を通して霊的な養いを受け続けています。「この書物(聖書)は、キリスト・イエスへの信仰を通して救いに導く知恵を、あなたに与えることができます。聖書はすべて神の霊の導きの下に書かれ、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です。」(Ⅱテモテ3:15-16)と聖パウロが言っていることはその通りであると実感します。

 もし、ご自身にとって大切な聖書のみ言葉をあまり意識したことがない、ということでしたら、この機にご自身がどの箇所を大切にしてきたか思い起こしていただき、心にとどめていただければと思います。神はそのみ言葉によって義に導いてくださいます。

聖書と現代的な価値観

 私たちが生きる現代社会は、宗教的な倫理観や教えよりも、物質主義的な価値観の方が広く浸透しています。そのような世の中を生きる私たちにとって信仰的に健全な教えは時に社会一般の価値観と両立しないこともあります。聖パウロは「だれも健全な教えを聞こうとしない時が来ます。そのとき、人々は自分に都合の良いことを聞こうと、好き勝手に教師たちを寄せ集め、真理から耳を背け、作り話の方にそれて行くようになります。」(Ⅱテモテ4:3-4)と言っていますが、現代の価値観と聖書の教えが離れていると感じるとき、世の中の価値観が変化したため現代に適応していない聖書の箇所、と解釈されることもあるかもしれません。そのような場合、聖書が神ご自身の啓示の書であることは十分踏まえられているでしょうか。世の中の価値観と聖書の箇所を照らし合わせ現代に適応しているかどうか選別するのではなく、聖書のみ言葉に照らされてこの世の価値観を見極めることが必要なのではないでしょうか。「御言葉を宣べ伝えなさい。折が良くても悪くても励みなさい。とがめ、戒め、励ましなさい。忍耐強く、十分に教えるのです」(Ⅱテモテ4:2)。世の価値観と異なる場合もありますが私たちは神の啓示の書である聖書に真理を見出し、そのみ言葉によって養われ、神のみ心に適うように生きるように、召し出されています。

日々の生活の中で

 初めに自分が大切にしている聖書の箇所を意識することをお勧めしましたが、それとともに日々の生活の中で聖書のみ言葉に与ることをあわせてお勧めします。健やかに身体を保つために日々の糧をいただくように、健やかに魂を保つために聖書のみ言葉を霊的な糧として日々いただき、信仰の旅を続けましょう。

(市川聖マリヤ教会牧師)
(松戸聖パウロ教会管理牧師)
(柏聖アンデレ教会管理牧師)

(『横浜教区報』2025年10月号 巻頭言より)

特祷・聖餐式聖書日課

特祷(特定24)

主よ、どうかみ民の罪を赦し、豊かな恵により、弱さのために犯した罪の束縛から解放してください。天の父よ、救い主、イエス・キリストのいさおによってお願いいたします。アーメン

旧約聖書 創世記 32:3-8,22-30

3ヤコブは彼らを見たとき、「ここは神の陣営だ」と言い、その場所をマハナイム(二組の陣営)と名付けた。 4ヤコブは、あらかじめ、セイル地方、すなわちエドムの野にいる兄エサウのもとに使いの者を遣わすことにし、 5お前たちはわたしの主人エサウにこう言いなさいと命じた。「あなたの僕ヤコブはこう申しております。わたしはラバンのもとに滞在し今日に至りましたが、 6牛、ろば、羊、男女の奴隷を所有するようになりました。そこで、使いの者を御主人様のもとに送って御報告し、御機嫌をお伺いいたします。」 7使いの者はヤコブのところに帰って来て、「兄上のエサウさまのところへ行って参りました。兄上様の方でも、あなたを迎えるため、四百人のお供を連れてこちらへおいでになる途中でございます」と報告した。 8ヤコブは非常に恐れ、思い悩んだ末、連れている人々を、羊、牛、らくだなどと共に二組に分けた。

22こうして、贈り物を先に行かせ、ヤコブ自身は、その夜、野営地にとどまった。23その夜、ヤコブは起きて、二人の妻と二人の側女、それに十一人の子供を連れてヤボクの渡しを渡った。24皆を導いて川を渡らせ、持ち物も渡してしまうと、25ヤコブは独り後に残った。そのとき、何者かが夜明けまでヤコブと格闘した。26ところが、その人はヤコブに勝てないとみて、ヤコブの腿の関節を打ったので、格闘をしているうちに腿の関節がはずれた。27「もう去らせてくれ。夜が明けてしまうから」とその人は言ったが、ヤコブは答えた。「いいえ、祝福してくださるまでは離しません。」28「お前の名は何というのか」とその人が尋ね、「ヤコブです」と答えると、29その人は言った。「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。お前は神と人と闘って勝ったからだ。」30「どうか、あなたのお名前を教えてください」とヤコブが尋ねると、「どうして、わたしの名を尋ねるのか」と言って、ヤコブをその場で祝福した。

詩編 121編

1       目を上げて、わたしは山々を仰ぐ∥ わたしの助けはどこから来るのか

2       わたしの助けは主から∥ 天地を造られた主から来る

3       神はあなたの足を堅く立て∥ まどろむことなく守られる

4       イスラエルを守る方は∥ 眠ることもまどろむこともない

5       主はあなたを守り、近くにいまして∥ その影はあなたを覆う

6       昼、太陽はあなたを撃つことなく∥ 夜、月もあなたを撃つことはない

7       主はすべての災いからあなたを守り∥ 命を支えられる

8       主はあなたの出ると入るとを守られる∥ 今より、とこしえに至るまで

使徒書 テモテへの手紙Ⅱ 3:14-4:5

14だがあなたは、自分が学んで確信したことから離れてはなりません。あなたは、それをだれから学んだかを知っており、15また、自分が幼い日から聖書に親しんできたことをも知っているからです。この書物は、キリスト・イエスへの信仰を通して救いに導く知恵を、あなたに与えることができます。16聖書はすべて神の霊の導きの下に書かれ、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です。17こうして、神に仕える人は、どのような善い業をも行うことができるように、十分に整えられるのです。

1神の御前で、そして、生きている者と死んだ者を裁くために来られるキリスト・イエスの御前で、その出現とその御国とを思いつつ、厳かに命じます。 2御言葉を宣べ伝えなさい。折が良くても悪くても励みなさい。とがめ、戒め、励ましなさい。忍耐強く、十分に教えるのです。 3だれも健全な教えを聞こうとしない時が来ます。そのとき、人々は自分に都合の良いことを聞こうと、好き勝手に教師たちを寄せ集め、 4真理から耳を背け、作り話の方にそれて行くようになります。 5しかしあなたは、どんな場合にも身を慎み、苦しみを耐え忍び、福音宣教者の仕事に励み、自分の務めを果たしなさい。

福音書 ルカによる福音書 18:1-8

1イエスは、気を落とさずに絶えず祈らなければならないことを教えるために、弟子たちにたとえを話された。 2「ある町に、神を畏れず人を人とも思わない裁判官がいた。 3ところが、その町に一人のやもめがいて、裁判官のところに来ては、『相手を裁いて、わたしを守ってください』と言っていた。 4裁判官は、しばらくの間は取り合おうとしなかった。しかし、その後に考えた。『自分は神など畏れないし、人を人とも思わない。 5しかし、あのやもめは、うるさくてかなわないから、彼女のために裁判をしてやろう。さもないと、ひっきりなしにやって来て、わたしをさんざんな目に遭わすにちがいない。』」 6それから、主は言われた。「この不正な裁判官の言いぐさを聞きなさい。 7まして神は、昼も夜も叫び求めている選ばれた人たちのために裁きを行わずに、彼らをいつまでもほうっておかれることがあろうか。 8言っておくが、神は速やかに裁いてくださる。しかし、人の子が来るとき、果たして地上に信仰を見いだすだろうか。」

旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society, Tokyo 1987,1988

特祷、詩編は『日本聖公会祈祷書』より引用しました。
©︎日本聖公会 1990

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