「救い主を待ち望む」降臨節第2主日

司祭 ダビデ 渡部明央
(マタイによる福音書 第3章1節-12節)

 降臨節に入り、教会暦は新しい年を迎えました。祭色は紫に変わり、各教会では、聖堂にアドベントクランツが設置されていることと思います。世間は華やかなクリスマスムード一色ですが、教会はその逆に、静かに祈りのときを過ごし、救い主の到来を待ち望みます。

 降臨節は、救い主み子イエスさまのご降誕と、世の終わりの時に王なるキリストが降臨されることを待ち望むという二つのテーマで紡ぎ合わされています。救い主の降臨をわたしたちは待ち望むわけですが、わたしたちは救い主をただ漠然と待つわけではありません。救い主の到来にむけて備える必要があります。

 降臨節第2主日の福音書では、洗礼者ヨハネが登場します。

「悔い改めよ、天の国は近づいた」(マタイ3章2節)
洗礼者ヨハネは、このように叫び、人びとに悔い改めの洗礼を授けていました。降臨節を過ごすにあたり、わたしたちもまた、この呼びかけに耳を澄ましたいと思います。

 「悔い改める」とは、ただ自己の言動を反省するわけではありません。「悔い改める」とは、いのちの道を再び歩み始めることです。いのちの源である主に心を向け、主の示される道を喜びのうちに歩むことです。
降臨節第2主日の特祷で、「罪を捨てる恵みをわたしたちに与え、贖い主イエス・キリストの来臨を喜びを持って迎えることができますように」と祈ります。

 救い主イエスさまは、十字架にかかることにより、わたしたちを贖われました。贖うとは、代価を払い、買い戻すことです。罪に支配されているわたしたちを救うため、イエスさまはご自身をささげられたのです。イエスさまは、ご自身をささげられてまで、わたしたちを神の愛のうちに戻そうとされたのです。そして罪からの解放と復活の喜びへと導いてくださったのです。

 このイエスさまのお姿を仰ぎ見るとき、神がどれほどわたしたちを愛し、そして赦してくださっているかが示されます。この神の愛と赦しに触れるとき、わたしたちはまことに自らを省みることができ、悔い改めへと招かれていくのです。

「希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって希望に満ちあふれさせてくださるように。」(ローマ15章13節)
 アドベントクランツのローソクに一本一本火が灯るにつれ、救い主の到来が近づいてきます。主がわたしたちに御手を差し伸べてくださり、わたしたちのために来てくださること。このことを憶えるとき、喜びと平安のうちに包まれます。「主よ、憐れみをお与えください」と祈り、主に心を向け、救い主を自らのうちに迎え入れる備えをしましょう。
 わたしたちのいのちを輝かせ、豊かにしてくださる主の到来を待ち望み、豊かに祈りのときを過ごして参りたいと思います。そして来るべき主の降臨を迎える時、天上の喜びに加えられ、大いに喜び祝って参りましょう。

(横浜聖アンデレ教会牧師)
(川崎聖パウロ教会管理牧師)

(『横浜教区報』2025年12月号 巻頭言より)

特祷・聖餐式聖書日課

特祷

慈しみ深い神よ、あなたは悔い改めを宣べ、救いの道を備えるため、預言者たちを遣わされました。その警告を心に留め、罪を捨てる恵みをわたしたちに与え、贖い主、イエス・キリストの来臨を、喜びをもって迎えることができますように、主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン

旧約聖書 イザヤ書 11:1-10

1エッサイの株からひとつの芽が萌えいで/その根からひとつの若枝が育ち 2その上に主の霊がとどまる。知恵と識別の霊/思慮と勇気の霊/主を知り、畏れ敬う霊。 3彼は主を畏れ敬う霊に満たされる。目に見えるところによって裁きを行わず/耳にするところによって弁護することはない。 4弱い人のために正当な裁きを行い/この地の貧しい人を公平に弁護する。その口の鞭をもって地を打ち/唇の勢いをもって逆らう者を死に至らせる。 5正義をその腰の帯とし/真実をその身に帯びる。 6狼は小羊と共に宿り/豹は子山羊と共に伏す。子牛は若獅子と共に育ち/小さい子供がそれらを導く。 7牛も熊も共に草をはみ/その子らは共に伏し/獅子も牛もひとしく干し草を食らう。 8乳飲み子は毒蛇の穴に戯れ/幼子は蝮の巣に手を入れる。 9わたしの聖なる山においては/何ものも害を加えず、滅ぼすこともない。水が海を覆っているように/大地は主を知る知識で満たされる。10その日が来れば/エッサイの根は/すべての民の旗印として立てられ/国々はそれを求めて集う。そのとどまるところは栄光に輝く。

詩編 72編1-8 または 72編

72編

1       神よ、あなたの正義を王に与え∥ あなたの正しさを王の子に授けてください

2       王が正しく民を治め∥ 正義をもって貧しい人を計らうように

3       山は民に平和をもたらし∥ 丘は正しさの実をもたらす

4       王は貧しい人の訴えを聞き∥ 貧しい者の子らを救い、権力を振るう者を打ち砕く

5       彼は太陽のように栄え∥ 月のように生き長らえる

6       牧場に降りる露のように∥ 地を潤す雨のように王は来る

7       彼が治める世には、正しい人が栄え∥ 月のある限り平和が続く

8       王は海から海まで∥ 川から地の果てまで支配する

9       敵は彼の前にひれ伏し∥ 刃向かう者は塵をなめる

10      タルシシと島々の王は贈り物を∥ シバとセバの王は貢を納める

11      すべての王は彼の前にひざをかがめ∥ すべての国は彼に仕える

12      王は叫び求める貧しい人と∥ 助け手のない人を救う

13      弱く乏しい人を憐れみ∥ 乏しい人の命を救う

14      王は彼らの命を虐げと暴力から救い∥ 彼らの血は王の目に貴い

15      王は長寿に恵まれるように∥ 人びとはシバの黄金を献げ、彼のために絶えず祈り、昼も夜も神の祝福を求める

16      地には豊かに麦が実り、山の頂きには穂波がそよぎ∥ その実りはレバノンのように栄え、野の草のように茂る

17      王の名は世々に及び、太陽の輝く限り栄える∥ すべての人は彼によって祝福され、すべての国は彼をたたえる

18      主なる神、イスラエルの神をたたえよう∥ 神独り不思議なみ業を行われる

19      栄光あるみ名をとこしえにたたえよう∥ 世界は神の栄光で満ちるように、アーメン、アーメン

使徒書 ローマの信徒への手紙 15:4-13

3キリストも御自分の満足はお求めになりませんでした。「あなたをそしる者のそしりが、わたしにふりかかった」と書いてあるとおりです。 4かつて書かれた事柄は、すべてわたしたちを教え導くためのものです。それでわたしたちは、聖書から忍耐と慰めを学んで希望を持ち続けることができるのです。5 忍耐と慰めの源である神が、あなたがたに、キリスト・イエスに倣って互いに同じ思いを抱かせ、6 心を合わせ声をそろえて、わたしたちの主イエス・キリストの神であり、父である方をたたえさせてくださいますように。7 だから、神の栄光のためにキリストがあなたがたを受け入れてくださったように、あなたがたも互いに相手を受け入れなさい。8 わたしは言う。キリストは神の真実を現すために、割礼ある者たちに仕える者となられたのです。それは、先祖たちに対する約束を確証されるためであり、9 異邦人が神をその憐れみのゆえにたたえるようになるためです。「そのため、わたしは異邦人の中であなたをたたえ、あなたの名をほめ歌おう」と書いてあるとおりです。10 また、「異邦人よ、主の民と共に喜べ」と言われ、11 更に、「すべての異邦人よ、主をたたえよ。すべての民は主を賛美せよ」と言われています。12 また、イザヤはこう言っています。エッサイの根から芽が現れ、異邦人を治めるために立ち上がる。異邦人は彼に望みをかける。」13 希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって希望に満ちあふれさせてくださるように。

福音書 マタイによる福音書 3:1-12

1そのころ、洗礼者ヨハネが現れて、ユダヤの荒れ野で宣べ伝え、 2「悔い改めよ。天の国は近づいた」と言った。 3これは預言者イザヤによってこう言われている人である。「荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を整え、/その道筋をまっすぐにせよ。』」 4ヨハネは、らくだの毛衣を着、腰に革の帯を締め、いなごと野蜜を食べ物としていた。 5そこで、エルサレムとユダヤ全土から、また、ヨルダン川沿いの地方一帯から、人々がヨハネのもとに来て、 6罪を告白し、ヨルダン川で彼から洗礼を受けた。 7ヨハネは、ファリサイ派やサドカイ派の人々が大勢、洗礼を受けに来たのを見て、こう言った。「蝮の子らよ、差し迫った神の怒りを免れると、だれが教えたのか。 8悔い改めにふさわしい実を結べ。 9『我々の父はアブラハムだ』などと思ってもみるな。言っておくが、神はこんな石からでも、アブラハムの子たちを造り出すことがおできになる。10斧は既に木の根元に置かれている。良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる。11わたしは、悔い改めに導くために、あなたたちに水で洗礼を授けているが、わたしの後から来る方は、わたしよりも優れておられる。わたしは、その履物をお脱がせする値打ちもない。その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる。12そして、手に箕を持って、脱穀場を隅々まできれいにし、麦を集めて倉に入れ、殻を消えることのない火で焼き払われる。」

旧約聖書、使徒書、福音書は『聖書 新共同訳』より引用しました。
©︎共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
©︎日本聖書協会
Japan Bible Society, Tokyo 1987,1988

特祷、詩編は『日本聖公会祈祷書』より引用しました。
©︎日本聖公会 1990

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