【主教メッセージ】礼拝指針について(2023年5月9日付) 詳細

教会活動における子どもの権利保護と安全への配慮についての指針

日本聖公会横浜教区
教会活動における子どもの権利保護と安全への配慮についての指針
(チャイルド・プロテクション・ポリシー)

はじめに

日曜学校をはじめとする、教会における児童を対象とした諸活動は、その時と場所、人との関わりを通じて、子どもたちに神の愛を知り、体験し、心身の健やかな成長を促し、信仰を育むことを目的とする福音宣教のとても重要な働きの一つです。
日本聖公会はその宣教の最初期から、医療、福祉とともに、教育の分野に力を注いできましたが、太平洋戦争によって惹き起こされた惨禍と犠牲とを経験し、わたしたちは特に子どもたちの命が守られること、平和を守ることを次世代への使命として、大切にしてきました。

国際社会は児童の人権を国際的に保障する必要性を早くから強く認識し、5か条からなる最初の「児童の権利に関する宣言」が1924年の国際連盟で採択、1959年の国際連合総会で10か条に拡大されました。1978年には国連人権委員会に「児童の権利に関する条約」の草案が提出、1979年の「国際児童年」を経て、1989年の第44回国連総会において「児童の権利に関する条約」(いわゆる「子どもの権利条約」)として採択され、1990年に発効、日本も1994年に批准しました。ここでは、18歳未満を「児童(子ども)」と定義し、「生きる権利」、「守られる権利」、「育つ権利」、「参加する権利」を保障されるべき権利の四つの柱としました。
特に教会の諸活動との関連では、差別の禁止(第2条)、子どもにとってもっとも良いことを考えなければならない(第3条)、意見を表明する権利(第12条)、表現・思想・良心・宗教の自由が守られること(第13・14条)、プライバシー・名誉が守られること(第16条)、虐待・放任からの保護(第19条)、障害がある子どもへの適切な配慮(第23条)、健康への適切な配慮(第24条)、薬物・性的搾取からの保護(第33・34条)などです。

こうしたことを踏まえて、日本聖公会横浜教区は、「教会活動における子どもの権利保護と安全への配慮についての指針(チャイルド・プロテクション・ポリシー)」を定めました。
教役者、児童を対象とした諸活動に従事するすべての指導者・ボランティアは、このチャイルド・プロテクション・ポリシーを熟読し、その意味するところをよく理解し、「子供たちを来させなさい。わたしのところに来るのを妨げてはならない。天の国はこのような者たちのものである。」(マタイ19:14)と言われた主イエスの福音宣教にともに仕えていきましょう。

◉ 基本的な価値観として共有すべきことがら

  1. 全ての児童を神に愛されたかけがえのない存在として、その価値を尊重します。
  2. 児童がその成長段階に応じて意思決定のプロセスに関与する権利の保証に責任を持ち、彼らが自らの成長に寄与できるように支援します。
  3. 児童に対してのみならず、教役者・指導者・ボランティアなどの関係者による相互のいかなるハラスメントも行ないません。

◉ 具体的な行動指針

  1. 差別・虐待・ハラスメントの禁止
    虐待には、身体的暴力の他に、心理的暴力、性的暴力、ネグレクト(養育放棄・無視)などがあります。
    ハラスメントとは、人間関係において、個人的属性および人格にかかわる事項等に関して、人を傷つけるような発言や行動を行い、その人に不利益や損害を与え、人権を侵害することです。個人的属性には、性別・性自認・性指向・年齢・能力・身体的な状況、出身地、家族関係、信条、国籍、民族、人種、職業等の社会的地位などが含まれます。ハラスメントのタイプは多岐にわたりますが、教会活動においては特に以下の事柄に注意してください。
    1. セクシュアル・ハラスメントとジェンダー・ハラスメント
      意図しているかどうかに関わらず、性的言動によって相手の人格を傷つけ不快にさせることです。セクシュアル・ハラスメントの場合には、両者の関係にパワーの差がある場合が多く、傷つけられても関係の悪化、評価などへの影響を恐れて相手に「No」が言えないため、心身に影響を受けたり、環境が悪化する場合があります。
      また、固定的な性差別言動によって相手に不快感を与えることをジェンダー・ハラスメントと呼びます。
      身体的な接触や性暴力、視線や性的ジョーク等は、個々人の感じ方や微妙なニュアンスの違いがあるので注意しましょう。
    2. パワー・ハラスメント
      年齢や立場などの優位性によって、従属的立場にある人に対して個人の尊厳や人格を侵害するような行動をしたり、指導の範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えたりすることです。
    3. いじめ
      相手の弱みを理由に、人格を否定したり、排他的・差別的に扱うことです。周囲の人たちがいじめがあることを知っていても何もしないことは、いじめ行為を容認することになり、いじめられている人の人権を侵害する行為です。

 民族的・文化的・宗教的な背景の違いにより、日本では何気なく行っていることも虐待やハラスメントと疑われたり、一方的に断定されて非難の対象となったりする場合があります。以下はその具体例です。

    1. 児童をひざの上に乗せて身体をさわる
    2. ほめるつもりで頭をなでる
    3. 指導しようと大声で叱る
    4. 宿泊を伴う活動で、男子と女子を同室(同テント)にする
    5. 保護者の了解を得ないで、児童と指導者が同じ部屋やテントに宿泊する
    6. 保護者の了解を得ないで、児童と指導者が一対一で閉ざされた部屋やテントで活動する
    7. 病気やけがの処置をせずに放置する
    8. 保護者の了解を得ないで投薬や処置を行なう(緊急時を除く)
    9. 児童の近くで喫煙や飲酒をする
  1. 安全への配慮
    対象児童の年齢、知識、体力にみあった、余裕のある計画をもってプログラムの実施し、必ず安全管理者を置いて、活動中の安全に関して常に十分な配慮をしてください。プログラムの計画・準備段階において、「リスク=必要な危険」(児童が判断可能な危険性や、児童の事故回避能力を育む危険性など、遊びに必要な危険性)と「ハザード=不必要な危険性」(児童が判断不可能で、遊びに全く無関係で不必要な危険性)を的確に見極め、「リスク」とは関係のないところで事故を発生させるおそれのある危険性である「ハザード」は、プログラムの運営者の責務として除去してください。特に、水のプログラム(川遊び、水泳等)を実施する際には、実施場所の事前及び直前の調査、十分な指導・監視及び水難救助の態勢を整えてください。この態勢が整わない時は、水のプログラム(川遊び、水泳等)を実施してはいけません。
    安全管理者(プログラムに帯同する指導者)の最低一人は、日本赤十字社や消防署が行う救命救急講習の修了者であることを確認してください。
    また、万一の事故に備えて、指導者を含む参加者に適用される行事保険に必ず加入してください。
  2. メールやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用
    個人対個人の情報交換手段であるメールに加え、近年ではLINEやTwitter、Facebookなどの一定のグループや不特定多数に情報を公開するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が、コミュニケーションに有益かつ必要な手段となっています。
    一方でその利用法は未だ成熟しておらず、個人情報の望まない流出や思わぬトラブル、犯罪に巻き込まれることもあり、ことに児童の利用にあたっては慎重な配慮が必要です。
    ここで守られるべき個人情報とは、「氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」(法第2条1項)で、氏名・連絡先(住所・居所、電話番号、メールアドレス)、本人が識別できる写真などです。
    指導者自身がこれらのツールの利用に細心の注意を払うとともに、児童間の利用についても注意を喚起してください。
  3. 飲酒・喫煙
    児童の安全を守るために、プログラム期間中の指導者の飲酒は禁止とします。また、受動喫煙防止はもとより、児童の喫煙習慣への興味を喚起する恐れのある児童の目に触れる場所での喫煙も禁止します。

参考資料

ボーイスカウト日本連盟『セーフ・フロム・ハーム「危害から守る」~思いやりの心を育むプログラム~』、2015
ボーイスカウト日本連盟『チャイルドプロテクションへの取り組み』https://www.scout.or.jp/_userdata/child_protection/child_protection.pdf
UNICEF「子どもの権利条約25周年」特設ページ http://www.unicef.or.jp/crc/
文部科学省「児童の権利に関する条約」 http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/jidou/main4_a9.htm
外務省「人権外交—児童の権利条約(児童の権利に関する条約)」http://www.mofa.go.jp./mofaj/gaiko/jido/index.html
立教大学「ハラスメント防止対策−様々な取り組みのご案内」http://www.rikkyo.ac.jp/about/activities/harassment/

チャイルド・プロテクション・ポリシーのサムネイル

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