司祭 ルカ 片山 謙
林間聖バルナバ教会牧師
厚木聖ヨハネ教会管理牧師
聖霊降臨後第8主日(特定13)
キリスト者
ロシアのウクライナ侵攻により始まった両国の戦争により、多くの人命がその犠牲になっています。ロシアもウクライナもキリスト者の多い国であることから宗教者として指導者たちによる停戦への働きかけを期待するところですが、残念ながらロシアの教会指導者にその働きかけは見られません。 2018年にイスタンブールで行われた東方正教会の主教会議で17世紀以降ロシア正教会の管轄下であったウクイナがウクライナ正教会として独立することが認められました。この決定にロシア正教会は猛反発し、コンスタンチノープル総主教庁とロシア正教会の間に深刻な断交が生じました。独立問題に端を発したウクライナとロシアの正教会の不和が続く中、それに同調するかのようにこの度の軍事侵攻が始まりました。同じイエス・キリストを主と仰ぐ多くの人々が戦場で命を奪い合い、武器を持たない民間人は同じ神に救いを求めて絶えず祈っています。
「キリスト者」とは何でしょうか。私たちはこの悲惨な状況を前にして、自ら問い直す必要があります。教会に属し、教会で神を礼拝してい る人でしょうか。今戦闘している多くの人もそのようにしています。神が私たちをキリスト者としてくださったそのみ心に注目したいと思います。
新しい人を身に着ける
コロサイの信徒への手紙の第三章では、古い人をその行いと共に脱ぎ捨て、造り主の姿に倣う新しい人を身に着け、日々新たにされるよう私たちに呼びかけます。そのためには、怒り、憤り、悪意、そしり、口から出る恥ずべき言葉を捨てることが必要で、もし地上的なもの、すなわち、みだらな行い、不潔な行い、情欲、悪い欲望、および貪欲を捨てないならば、神の怒りが下ることを教えています。 私たちは貪欲という偶像礼拝に傾く危うさも持っていますが、神は同じ私たちに新しい人を身に着けるよう招いておられます。憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に付け、互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合うことのできる新しい人です。この新しい人を身に着けるために、私たちは「キリスト者」とされたのです。
キリストの平和にあずかる
そして、私たちはキリストの平和にあずかります。 「これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。また、キリストの平和があなたがたの心を支配するようにしなさい。この平和にあずからせるために、あなたがたは招かれて一つの体とされたのです。」(コロサイ3・14,15)私たちは実生活で命を尊び、愛に生きることによって真正なキリスト者へと成長するよう導かれます。平和宣教月間である8月、より一層、キリストとの一致を求め日々の生活に励みましょう。
『横浜教区報』2022年8月号巻頭言より
旧約聖書 コヘレトの言葉 1:12-14,2:28-23
12わたしコヘレトはイスラエルの王としてエルサレムにいた。 13天の下に起こることをすべて知ろうと熱心に探究し、知恵を尽くして調べた。神はつらいことを人の子らの務めとなさったものだ。 14わたしは太陽の下に起こることをすべて見極めたが、見よ、どれもみな空しく、風を追うようなことであった。
2:18太陽の下でしたこの労苦の結果を、わたしはすべていとう。後を継ぐ者に残すだけなのだから。 19その者が賢者であるか愚者であるか、誰が知ろう。いずれにせよ、太陽の下でわたしが知力を尽くし、労苦した結果を支配するのは彼なのだ。これまた、空しい。 20太陽の下、労苦してきたことのすべてに、わたしの心は絶望していった。 21知恵と知識と才能を尽くして労苦した結果を、まったく労苦しなかった者に遺産として与えなければならないのか。これまた空しく大いに不幸なことだ。 22まことに、人間が太陽の下で心の苦しみに耐え、労苦してみても何になろう。 23一生、人の務めは痛みと悩み。夜も心は休まらない。これまた、実に空しいことだ。
詩編 95:1-7
1 主に向かって喜び歌い‖ 救いの岩に声を上げよう
2 感謝に満ちてみ前に進み‖ 賛美の歌で神をたたえよう
3 主は偉大な神‖ すべての神にまさる王
4 地の深みは主のみ手に‖ 山の頂もまた主のもの
5 海は神のもの、主はこれを造られた‖ 乾いた地も主は造られた
6 身を低くして伏し拝み‖ 造り主、主のみ前にひざまずこう
7 主はわたしたちの神、わたしたちは神の民‖ わたしたちはその牧場の民、そのみ手の羊
使徒書 コロサイの信徒への手紙 3:5-17
5だから、地上的なもの、すなわち、みだらな行い、不潔な行い、情欲、悪い欲望、および貪欲を捨て去りなさい。貪欲は偶像礼拝にほかならない。 6これらのことのゆえに、神の怒りは不従順な者たちに下ります。 7あなたがたも、以前このようなことの中にいたときには、それに従って歩んでいました。 8今は、そのすべてを、すなわち、怒り、憤り、悪意、そしり、口から出る恥ずべき言葉を捨てなさい。 9互いにうそをついてはなりません。古い人をその行いと共に脱ぎ捨て、 10造り主の姿に倣う新しい人を身に着け、日々新たにされて、真の知識に達するのです。 11そこには、もはや、ギリシア人とユダヤ人、割礼を受けた者と受けていない者、未開人、スキタイ人、奴隷、自由な身分の者の区別はありません。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにおられるのです。12あなたがたは神に選ばれ、聖なる者とされ、愛されているのですから、憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。 13互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたも同じようにしなさい。 14これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。 15また、キリストの平和があなたがたの心を支配するようにしなさい。この平和にあずからせるために、あなたがたは招かれて一つの体とされたのです。いつも感謝していなさい。 16キリストの言葉があなたがたの内に豊かに宿るようにしなさい。知恵を尽くして互いに教え、諭し合い、詩編と賛歌と霊的な歌により、感謝して心から神をほめたたえなさい。 17そして、何を話すにせよ、行うにせよ、すべてを主イエスの名によって行い、イエスによって、父である神に感謝しなさい。
福音書 ルカによる福音書12:13-21
13群衆の一人が言った。「先生、わたしにも遺産を分けてくれるように兄弟に言ってください。」 14イエスはその人に言われた。「だれがわたしを、あなたがたの裁判官や調停人に任命したのか。」 15そして、一同に言われた。「どんな貪欲にも注意を払い、用心しなさい。有り余るほど物を持っていても、人の命は財産によってどうすることもできないからである。」 16それから、イエスはたとえを話された。「ある金持ちの畑が豊作だった。 17金持ちは、『どうしよう。作物をしまっておく場所がない』と思い巡らしたが、 18やがて言った。『こうしよう。倉を壊して、もっと大きいのを建て、そこに穀物や財産をみなしまい、 19こう自分に言ってやるのだ。「さあ、これから先何年も生きて行くだけの蓄えができたぞ。ひと休みして、食べたり飲んだりして楽しめ」と。』 20しかし神は、『愚かな者よ、今夜、お前の命は取り上げられる。お前が用意した物は、いったいだれのものになるのか』と言われた。 21自分のために富を積んでも、神の前に豊かにならない者はこのとおりだ。」