+主教イグナシオ
欅の坂みち 2023年12月号
十月七日、パレスチナの武装勢力ハマスが、ガザ地区からイスラエルに向けて多数のロケット弾を発射した上、イスラエル領内に越境攻撃を行い、多数の人を殺害し、また人質として連れ去りました。イスラエルはそれに対する報復として空爆を続け、ガザ地区北部へと侵攻しました。
歴史が証ししている通り、力の行使は、悲しみと憎しみ、恨みしか生み出しません。そうであるとしたら、たとえどんな大義があったとしても、それは決して行使してはならないものです。双方に深く複雑な背景があるのでしょうが、犠牲となり、泣き悲しむのはいつも双方の市民、殊に子どもたちと高齢者、女性たちです。
また、どちらの勢力によるものかは定かではないものの、十月一七日にはアリ・アハリ―聖公会病院が爆撃を受けました。二〇〇八年にガザ紛争が始まって以来、ガザで起きたどの出来事よりも多い、前例のない数の死者が出たとされています。
赤十字国際委員会は、「病院は人間の生命を守るための聖域であるべきで、死と破壊の現場であってはなりません。いかなる患者が病院のベッドで殺されることも、命を救う立場の医療従事者が無念の死を遂げることも、言語道断です。」と、今回の爆撃に対して抗議の声明を発表しています。
今もなお、警報と爆発音の下で脅え、痛み傷ついている人たちのその痛みに思いをよせ、その痛みを身に憶えつつ、まず何よりも双方が力の行使を即座に止めることを強く求めると共に、心身共に傷ついている人たちのための支援を考えていきたいものです。
十一月七日の朝日新聞朝刊三〇面の記事は、「イスラエル人もパレスチナ人も、自分の大切な人を傷つけられたからと言って、相手の大切な人を傷つけてよいわけではない。」と結ばれていました。